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第42話

 高価なもので一般のΩは使うことはほとんどない。 「数時間で効き目は切れるからね。発情期だから効き目は薄いかもしれないけど」 「すいません」 「ひなたは抑制剤を常用してたよね。どうしてヒートが起きたのかな?」 「ああ……それは、抑制剤が切れてしまって……あっ、僕のカバン」  持っていはずのカバンはどこに行ったのだろう。  和人が僕を助けてくれた時にはすでに手に持っていなかった。 「カバンなら俺のスタッフが回収してくれたよ」  和人は寝室を出ていった。  すぐにカバンを持ってきてくれた。 「これなんですけど……」 「え、何したの?」  カバンは金具も壊れているし、外側の布もボロボロになっている。ベッドの上にカバンの中から粉々になった抑制剤を取り出した。スマホはガラスが危ないのでカバンの中を広げて見せた。 「カバンごと道路に落としてしまって、車に轢かれたんです」  和人は唖然として、「じゃあ、いつからあそこにいたの?」と聞いた。 「3時前くらい」 「ずっと待ってたの?」 「はい。連絡の手段がなくて」  粉々になったスマホでは連絡は取れない。 「ここの住所は?」 「メールでスマホに保存してたのでここの近くまではこられたんですけど、待ってたら会えないかなって……」 「彰人は? 彰人に連絡しなかったの? そしたら俺に繋がったでしょ?」 「公衆電話から会社に電話をしたけど、午後から出張だったから伝言を頼んだけど、伝わらなかったんですね」  和人は長いため息をついて、「俺が偶然通りかからなかったらどうするつもりだったの?」と呟いた。 「その時は諦めて帰るつもりでした」 「諦めてって……襲われそうになってたけど」 「それは……たまたまです」 「たまたまで事故起こしてたらどうするつもりだったんだ?」  強く言われて押し黙った。 「それに、もっと早くホテルでも取って退避してたらよかったのに」

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