41 / 55
第41話
小声になる。ベッドの上に座り直すと、「どうしてあんなところにいたのかな?」と和人が聞いた。
「……えっと……和人を、追いかけてきた」
声は小さくなってしまう。
迷惑をかけ通しだ。
和人はじっと僕が話すのを待っている。
「決断を、したんだ」
和人を追いかける決断を。
「今まで、桐生をずっと好きで、それが僕の生きてきた理由で……。全部が桐生中心に回ってたんだ。だけど、桐生には運命の番がいて、僕は1人で……」
和人はベッドの横に立って僕を見下ろしている。
「自分で決めることなんて今までなかった。和人が、僕に決断を迫ったから考えたんだ」
今の自分が何を選ぶべきかを。
僕は運命に流されたくない。自分の意思で惹かれたいと思った。
発情期がくるより先に伝えたかった。
「発情期とか、ヒートとか、Ωだからとか、運命とか……」
顔を上げて和人を見上げる。
少し目を細めた和人はじっと見つめ返す。
「僕は、和人が好きだ」
言葉にできなかった思いがこぼれ落ちる。
聞きたいこと、知りたいことよりも先に伝えたいことが溢れでる。
「和人に愛されたいって、望んだんだ」
立ったままの和人は返事をしない。
「あなたのものになりにきました」
「そうだね。そうだよ。ひなた」
和人は噛み締めるようにそういうと僕を抱きしめる。
「僕の運命」
強く抱き返した。
甘い香りは起きない。身体が熱くもならないことに驚いて、「僕はΩですよね?」と和人に言うと和人が笑った。
「ここ。痛くない?」
和人は僕を離して首を指差した。
指先で触れると絆創膏らしいものが貼られている。
「痛くはないですけど」
「勝手に悪かったんだけど、即効性の抑制剤を打った」
首に痛みが走ったのはそのせいか。
ヒートを起こしたΩに打たれる即効性の抑制剤。
ともだちにシェアしよう!