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第41話

 小声になる。ベッドの上に座り直すと、「どうしてあんなところにいたのかな?」と和人が聞いた。 「……えっと……和人を、追いかけてきた」  声は小さくなってしまう。  迷惑をかけ通しだ。  和人はじっと僕が話すのを待っている。 「決断を、したんだ」  和人を追いかける決断を。 「今まで、桐生をずっと好きで、それが僕の生きてきた理由で……。全部が桐生中心に回ってたんだ。だけど、桐生には運命の番がいて、僕は1人で……」  和人はベッドの横に立って僕を見下ろしている。 「自分で決めることなんて今までなかった。和人が、僕に決断を迫ったから考えたんだ」  今の自分が何を選ぶべきかを。  僕は運命に流されたくない。自分の意思で惹かれたいと思った。  発情期がくるより先に伝えたかった。 「発情期とか、ヒートとか、Ωだからとか、運命とか……」  顔を上げて和人を見上げる。  少し目を細めた和人はじっと見つめ返す。 「僕は、和人が好きだ」  言葉にできなかった思いがこぼれ落ちる。  聞きたいこと、知りたいことよりも先に伝えたいことが溢れでる。 「和人に愛されたいって、望んだんだ」  立ったままの和人は返事をしない。 「あなたのものになりにきました」 「そうだね。そうだよ。ひなた」  和人は噛み締めるようにそういうと僕を抱きしめる。 「僕の運命」  強く抱き返した。  甘い香りは起きない。身体が熱くもならないことに驚いて、「僕はΩですよね?」と和人に言うと和人が笑った。 「ここ。痛くない?」  和人は僕を離して首を指差した。  指先で触れると絆創膏らしいものが貼られている。 「痛くはないですけど」 「勝手に悪かったんだけど、即効性の抑制剤を打った」  首に痛みが走ったのはそのせいか。  ヒートを起こしたΩに打たれる即効性の抑制剤。

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