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第55話
「何かあったら連絡しますよ。仕事、してきてください」
和人を促して、スタッフからシフト表を受け取る。確かに日本橋のお店はスタッフが足りない。
「Ωの子がヒート休暇だからね。俺が行ってくるよ」
仕事のスイッチが入れば真面目にしてくれるんだけど。
「お願いしますね」
「じゃあ、今夜は俺にもサービスお願いします」
和人が笑って額に口づけをした。
「「わっ、ちょっとっ」」
近くにいたαのスタッフは慌てて離れる。
抑制剤は本当に効きが悪い。
スタッフは和人を店から引き摺り出して窓を全開にして、「そんなんだから一緒に仕事できないんですよ」と怒った。
「ご、ごめん」
「ひなたマネは裏で事務仕事お願いします」
ホールスタッフに怒られて僕は店の裏の事務所に向かった。
騒がしい毎日。桐生の側でじっと耐えていた日常とは正反対の生活。
耐え続けることも、抑え込むこともない。
甘えて、甘えあって、笑い合うことが自然にできる。
フェロモン過多ではあるけど、僕の幸せと言える。
運命の番が側にいるのだから仕方がない。
番たいと身体は反応して、惹かれあっているのだから。
終わり。
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