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おわり

車椅子の青年は窓を見上げていた。 塞がれた窓のむこうで、彼はまた責められ犯されているのだろうか。 彼は。 本当にはそれを望んでない。 それは分かっていた。 縛られた鎖が見えたから。 それは見えない鎖だ。 初めて彼を窓の向こうに見た時、「こんなに沢山の鎖に繋がれている人間を見た事がない」と思った。 青年には鎖が見える。 みんな何かに人は繋がれているけれど、彼は誰よりも繋がれていて、しかもそれは太い幾つもある鎖で。 そんな人間は見たことがなかった。 それが彼興味を持ったのがはじまりだった。 だけど、青年の視線に気付き、こちらを見返した時から少しづつ彼の鎖は外れていって。 見つめあう度外れていく。 そして今度は優しい糸が青年と彼を結ぶ。 どんなに離れても切れない細い糸が。 でもどうしても外れない鎖があった。 その正体を知った。 彼を窓の前で犯しながら、自分を見つめるあの男。 あの男こそが最後の鎖なのだと。 そしてゾッとした。 彼よりも縛られている存在がそこにいた。 初めて見た時の彼にも驚いたが、この男はそれ以上に縛られていた。 この男こそが誰よりも鎖に縛られ、身動き出来なくなっていた。 あの男によって脚を奪われたが、青年は男を哀れに思っている。 あれでは。 あの男はどこにもいけないだろう。 どこにも。 あんなに縛られていては。 いくら脚があっても。 見えない窓の向こうに彼を見る。 糸で繋がっている。 二人は繋がっているから。 思っている。 それが届くように。 突然目の前で、見上げていた窓が砕けちった。 窓ガラスと、打ち付けた板が落ちてくる。 あやうく大ケガをするところだった。 そして、もっと驚いた。 ふわりと、落ちてきた。 体重などないかのように 彼が落ちてきた。 音もなく青年の前に裸足で降り立つ。 身にまとっているのはシャツの上だけで。 今の今まで犯され責め苛まれていたのだとわかる。 体液に塗れ、噛まれ吸われた跡、手足に縛られた痣。 でも。 今、ここにいる。 車椅子から腕を伸ばした。 彼が腕の中に飛び込んできた迷いなく。 もう彼にはどんな鎖もなかった。 何が起こったのか分からなかった。 でも、彼はここにいる。 すべての鎖を断ち切って。 青年は待ちわびていた恋人を抱きしめた。 「マスターが、自由になれって命令したんだ。自分も自由になるからって」 彼は無邪気に言った。 あの男が彼を自由に? それは有り得ない。 あんなに縛られているような男は彼を解放しないし、自分自身も解放されるわけがない。 「お前には知識も力もあるから逃げてみせろって。僕はマスターがいないと軍が追ってくるからって」 彼は無邪気に言うと、青年の腕から逃げて、車椅子をおしはじめる。 逃げなければならない。 軍はすぐに気づくだろう。 彼は思う。 軍事研究の成果である彼の頭はもう脱出のプランを何通りも考えていた。 まずは服を奪わないと。 車椅子のこの人は、この大事な人は車椅子だから目立つけど、車椅子だからこそ、他人の目を欺けることもあるはずだ。 それから資金を調達して・・ 「あの男は?」 青年が思考が追いつかないまま聞く。 愛しい。 マスターと違って理解が遅いけれど、この新しい恋人が愛しい。 マスターとはちがうけど、愛してる。 飛び降りたときにそれがわかった。 「マスターは自分を解放して、僕を解放した」 彼は聖なる言葉のように、それを口にした。 「マスター、愛してる」 いや、それは聖なる言葉だった。 ああ、青年はそれで理解した。 あの哀れな男が自由になる方法は1つしかなかったから。 「あなたが好き」 思いついたように彼に言われて、青年は笑った。 「オレも好きだよ」 さて、二人でどこまで逃げれるのか。 そう思いながら 壊された窓の中には、窓を壊した斧と、自分で頭をそれで割った男の死体が転がっていた おわり

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