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第十話「Ich liebe dich」
一つ息を吐く。インターホンへ伸ばした指先が、やや震えているのを見て、苦笑した。姿勢を正し、ゆっくり息を吸う。
インターホンを押し込むと、すぐに足音が聞こえてきて、ドアが勢い良く開いた。
「……いらっしゃい、夜鞠くん! バイトおつかれさま」
「こんばんは、鈴介くん」
鈴介は、ぱっとドアから手を離し、夜鞠の腕を引っ張った。
「ね、今いいとこなんだよ! 一緒に見よ!」
「えっ、いいとこ……って?」
「テニス!」
カーペットの上に座椅子を置いて、鈴介は夜鞠を座らせる。鈴介は、麦茶を用意して、その横に座った。
「あ、待って鈴介くん、僕今汗が……」
「んー、夜鞠くん嫌?」
「……その距離で君が気にならないならいいです」
鈴介は夜鞠の首元に顔を寄せて笑う。鈴介の頭を撫でると、彼はきゃっと笑った。
「ふふ、ホント君はかわいいですよね……」
「かわいい?」
「かわいいかわいい。抱きしめていい?」
「いいよぉ」
夜鞠は鈴介の身体を抱きしめる。鈴介はにまにまと笑いながら身体を回転させて、夜鞠の足の間に座った。テレビの画面を、真剣な表情でじっと見ている鈴介の頭に顎を置くと、彼はけらけら笑った。
「……鈴介くん、テニス強いって言ってましたよね」
テレビの中では、選手が鋭い目で相手を見つめていた。鈴介は身動ぐ。
「県で何番、くらいだけどね」
「それってすごいことですよ。僕にはそういうの全くないから」
「ふふ、ありがとう。俺テニス大好きだったから、すごく頑張ったんだよぉ」
鈴介は夜鞠の腕に頭を乗せて、呟いた。
「……俺、ぼんやりしてるでしょ? でも、テニスしてるときは違う人に見えるくらい、強そうなんだって」
「強そうな鈴介くんか……」
「ふふ、そうだよねぇ」
鈴介はにこにこと笑いながら、左右に揺れる。夜鞠がぎゅっと鈴介を抱きしめると、鈴介はぴっと動きを止めた。
「……でもね、試合の様子しか知らないコーチや監督には、俺が、すごい強い奴に見えてる。俺がどんな人間かなんて、あの人たちは興味がないんだね」
鈴介は、少し俯いた。
「ああいう人たちって、どうして、こういう成功例があったってのを、ずっと引きずってその型にはめようとしてくるんだろう。それで、その、成功した先輩と同じことができなかったら、『手を抜いてる』って叱るんだよ。……変だよね、違う人間なのに」
鈴介は、テレビを真っ直ぐに見つめたまま、小さな声で呟く。
「……好きじゃなかった。他人をなぞらされてるテニス」
夜鞠の腕が、ぎゅっと掴まれる。
「…………あの時ね、テニスが嫌いンなっちゃった」
ギリギリで耐えていた心の弱いところに水滴を落とされて、まるで砂糖が溶けるかのように、すっと心が折れるあの心地が、鈴介は嫌いだった。今でも、その痛みを鮮明に思い出せる。
「あっ、今の見た!? すげーっ!」
鈴介は、ぱっとテンションを切り替えて、テレビを指差して前のめりになる。その切り替えの速さについていけず、夜鞠は鈴介の顔を凝視した。
「……でもね、好きなんだ。こんなに嫌いなのにね。……変な気持ち」
鈴介はへにゃっと笑った。
「……一度好きになったものって、なかなか完全に嫌いにはなれないんだよね。だって、好きだったのは確かなんだもん」
「…………優しいね」
夜鞠は微笑む。
「違うよ、多分ね、自分の好きなものが減っちゃうのが嫌なだけなんだよ」
「……そうですか」
きっと、彼にとって、"好き"というのはとてつもなく特別な感情で、それを失うことは、彼にとってこの上なく耐え難いのだろう。彼は、自分と同じで、少なく深く、ものや人を大切にすることを好む性格なのだと、夜鞠は思った。そして、自分とは違い、それに対して、それがどれほど自分を苦しめようが、突き放さない優しさを持っている。
「……そんなに"好き"を大切にする君の"好き"になれた僕は幸せですね」
夜鞠は鈴介の頭を優しく撫でる。自分が彼を傷つけるものになってしまうことは絶対にないと、自分を信じられるようになりたいと思った。
「…………ふふ、くすぐったい」
鈴介は頬を染めて、くすくす笑った。
「あ、夜鞠くんご飯まだだったよね? 作ったから食べようよ」
「本当ですか」
「夜鞠くんほどじゃないけど、料理はちゃんとできるよー?」
鈴介はぴょんと飛び跳ねるようにして立って、コンロの方へ向かった。そこを疑っていたわけではないのだが、と思いつつ、夜鞠は鈴介を追うように立ち上がった。
夜鞠が風呂からあがると、鈴介が、ぼんやりとテレビを眺めていた。少し顔が動いて、目が合う。
「わっ!」
「……ふふ、随分集中して見てましたね」
「ち、ちがうよ、ぼけっとしてただけ……」
鈴介はへらっと笑った。夜鞠は、鈴介の隣に歩いてきて座る。
「ドライヤー分かった?」
「うん。ありがとう」
「いいえー」
鈴介は、待ってましたと言わんばかりににこにこして、机の真ん中に寄せられていた酒の缶に手を伸ばした。
「……お酒飲む?」
「あ、ううん、今日は」
夜鞠が、鈴介の手を押さえる。鈴介は首を傾げた。
鈴介の指に、そっと握るように軽く触れ、手を重ねる。
「……今日は」
夜鞠は、鈴介に覆いかぶさるようにしてそっとキスをした。唇が離れると、鈴介は赤い顔で尋ねる。
「…………いいの?」
「恥ずかしいこときくんですね」
鈴介は、テレビを消すと、夜鞠の腕を引いた。ベッドに彼を連れていき、そのまま押し倒す。
「…………嫌じゃない?」
「もしも嫌なら、君が待ってくれることを知っているのに、嫌だって言わないわけがないでしょう」
「嫌になったら言って」
鈴介は夜鞠の口にキスをする。
右手で、夜鞠の寝間着のボタンを、一つずつ外していく。
「ま、待って! じ、自分で脱ぎます」
「……嫌だった?」
「…………そういう、訳じゃなくて……」
鈴介は手を止めて、すがるような目をして首を傾げた。
「……だめ?」
「……っ、……だめ、じゃない、ですけど……っ」
ひとつひとつ、丁寧にボタンが外される。そこまでしなくても脱がせることはできるはずなのに、彼はボタンをしっかりと、下まで外していく。羞恥心がふつふつと湧き上がる。
「……鈴介くん、やっぱり自分で脱ぎます……」
「…………やだ」
鈴介はすべてのボタンを外し終えると、満足そうに微笑み、ゆっくりと服を脱がせて、夜鞠をシャツだけの状態にさせた。そのシャツの下に、するりと手を這わせる。
「……これ、えっちだね……。思ってたよりゾクゾクする」
「あ、ああ……タトゥーですか……?」
「うん。…………よくこんなところにいれたね」
鈴介はシャツも脱がせて、夜鞠の白い肌をそっと撫でた。
「…………寒くない?」
「……え?」
「冷房、寒くない?」
尋ねられて、夜鞠ははにかんだ。
「…………暑いくらいです」
「温度下げる?」
「ううん、大丈夫です。冷房なんて、きっとすぐ、あってないようなものになりますから」
「……そうだね」
鈴介はゆっくりと夜鞠の身体に手を触れた。
生暖かい水音と、荒い息遣い。
「…………っは、……は……」
「夜鞠くん、大丈夫?」
「……う、ん……ッ」
ほとんど発音できていないような声で、夜鞠が頷く。
「……無理しなくていいよ」
「無理じゃないです、……ごめんね、僕……下手くそだから……」
「上手だよ。ほら、どうなってるか分かる?」
鈴介は、夜鞠の腹をつうと指でなぞって、とんとんと叩いた。夜鞠は腕で顔を隠して、小さく口を開く。
「……っ、はいって、る……」
「うん、そうだよ。夜鞠くんが頑張ってくれたからだね」
ありがとうと笑う彼に、夜鞠は首を振る。鈴介は、夜鞠の頭を優しく撫でた。
「は……っ、は……、う……」
「……夜鞠くん? きつい?」
夜鞠の腕を掴んで顔から離す。夜鞠の頬が赤く染まり、目からは雫がこぼれた。
「……っは、ぅ……」
「……ふ、かわいい、夜鞠くん」
鈴介は首をかしげて小さく笑った。見たことのない表情に、夜鞠は腰がゾクッとした。
「かわいく、は…………ッ」
「顔隠さないで」
「……っ、嫌です……っ」
「……嫌って言われたら困っちゃうな……。……ほんとに嫌?」
夜鞠は頷く。誰が好き好んで、こんな醜態を晒したいものかと、唇を噛む。鈴介は苦笑をこぼす。
「でも、顔見ないと、夜鞠くんが気分悪くなったりしても、俺わかんないよ?」
夜鞠は小さく首を振る。鈴介は、無理やり夜鞠の腕を掴んでベッドに押し付けて、ぎゅっと握りこんだ。
「……どうしてだめなの? こんなにかわいいのに、見られないなんてもったいないよ」
「かっこわる、い……」
「…………大丈夫。すごくかわいいよ」
鈴介は、ゆっくりと夜鞠の性器に手を伸ばした。握り込んで擦ると、夜鞠の身体が跳ねた。
「ぁ、ふ……っ、なん……っ」
「ふふ、きもちいいね」
「は、は……っ、ぁ、は……」
前戯で相当虐められた後の性器が、簡単に快感を拾う。それに、先程までに比べ、遥かに感度が良くなっているのが分かって、夜鞠は混乱した。
「は……、あ、あ……ッ」
「夜鞠くん、さっきより気持ちよさそうだね」
「ぁ、くる、……っ、ぁ、あ……ッ」
夜鞠の身体が滑らかに跳ねて、呼吸にあわせて揺れる。精を吐き出した性器から手を離して、鈴介は夜鞠にキスをした。
「ん、ぁ……っ、ん、んん……」
夜鞠は頭を無理矢理持ち上げるようにして、鈴介のキスに応える。唇を離すと、鈴介は苦笑した。
「……ごめん、夜鞠くん、ちょっと苦しいでしょ。……やっぱり身長差がなぁ……」
「……鈴介くん」
夜鞠はゆっくり身体の力を抜いて寝転がると、ふっと笑った。
「……ごめんね、キスは、今はもう…………。僕、首が痛くなっちゃって」
真顔で、鈴介は夜鞠を見つめる。
「……今もしたい」
夜鞠は一瞬戸惑ったが、すぐに鈴介はその真剣そうな表情を崩して、へらっと笑った。
「でも、後で特別なごほうびが待ってるなら、それでもいいよ」
夜鞠を見つめる鈴介の茶色い瞳は、深く甘い色を孕んでいる。
「……ふ、ふふ、僕、覚悟したほうがいいかな?」
「うん」
鈴介は、ゆっくりと律動を始めた。夜鞠の性器を握り込んで、緩やかに扱く。
「っ、は……っ、ぅ……」
「かわいい……。どうしよう、かわいいなぁ……」
「か、わいいって……っ、さっきから……、くすぐったいです……っ」
「……かわいい、夜鞠くん」
鈴介は、夜鞠の右足を肩にかけてから、また再び律動を再開する。夜鞠は眉をひそめた。
「……君は言われ慣れてるかもしれませんけど、普通、言われないんです……、そういうことは……っ」
「……っは、……やだ?」
鈴介は少し微笑んで尋ねる。夜鞠の性器の先に指を滑らせていき、親指でぐりぐりと擦った。
「……やとかじゃ、なくて……っ、んん……ッ」
「やじゃないんだ、よかった」
「待っ……、鈴介く……っ」
一気に、射精感がせり上がる。
「……は、ぅ、ン……っ、ぁ、あ……」
「ぁ、は……、きもちよさそうだね……」
「だ、め……ッ、変な……」
突如、身体の奥をじんと震わせるような快感を感じた。夜鞠は思わず背を逸らしてしまう。
「ッ、ン……っ、ん……ぁ……っ、これ、待っ……なんか、違……っ」
「……夜鞠くん、いつもと違うのわかるんだね……」
「ぅん……っ、な、に……?」
鈴介が、にっと笑って、夜鞠の腰を逃すまいと足をぎゅっと握る。身体を捻ることも難しくなって、夜鞠は反対の足を突っ張らせる。
「は、……は……っ、はぁ……っ」
「じゃあ、その違うのに集中してみて?」
鈴介は、再び性器を握ると、上下に手を動かした。快楽が途切れてしまわないように、彼がソレを見失ってしまわないように。
「ッ、ぅ、ぁ……っ、あ……、ふ………」
「うん、きもちいいね。……上手だね、夜鞠くんは」
「ぁ……っ、やめて、ください……っ。ほめられるの、好きじゃ、っ……!」
「……っ、んー? ほめられるの、いや? きもちよくない?」
「ぁ、ン……っ、きもちい、です……っ、でも、わかんなく、なっ……ちゃ……っ」
「……っ、ふふ。夜鞠くんはいいこだね、ほとんどはじめてでも、こんなに気持ちよくなれて」
夜鞠はシーツを掴んで、びくびくと跳ねる。
「……っ、ク、る……」
「くる?」
「っ……は、ぁ、あ……っ、だめ……っ、鈴介、く……っ」
開いた口から唾液が溢れる。拭うこともできないまま、夜鞠は鈴介の指一本に狂わされていく。
「ン゙……ッ、ぁ……っ、あ……!」
「ぅ、ん……ッ」
鈴介が甘く吐息を漏らす。夜鞠の身体が、大きく跳ねて揺れる。
「……は、またイっちゃったね。大丈夫?」
「ぁ、ぅ……。ごめ、ん……、鈴介くん……」
「ううん、すごくうれしいよ。挿れたまんまで二回もイってくれるとは思わなかったから……」
鈴介は夜鞠の腹の上に飛び散った精液をティッシュで拭き取って、更にもう一枚取り出し、夜鞠の口元を拭った。
「……気持ち悪くない? 苦しくない?」
「大丈夫……です……。すごく、ふわふわします……。僕、こっち好きかもしれません……」
蕩けた瞳で夜鞠が笑う。夜鞠の呼吸が落ち着いたのを確認してから、鈴介は夜鞠の頭を撫でた。
「もう少し頑張ってくれる? やめてもいいよ」
「大丈夫、です……。君にも……」
鈴介は、ゆっくりと性器を引き抜いて、またゆっくり挿れていく。何度か繰り返しながら、夜鞠の反応を確認する。
「……ん、は……っ。は……、はぁ……っ」
「大丈夫? 苦しくない?」
鈴介は何度も確認しながら律動を速めていく。
「ぁ、鈴介く、ん……っ、触らないで……っ」
「……でも、ちんちん触んないとあんまり気持ちよくないでしょ」
「触っ、たら……、保たない、です……ッ」
夜鞠はもうすでに息が上がり、手まで赤くしている。鈴介は、構わずにゆっくりと夜鞠の性器を撫でた。
「……あ……ッ、や……っ、ぅ、ン、んん……!」
「声出ちゃうね。かわいいなぁ」
鈴介が笑うと、夜鞠は手で口を押さえた。目が潤み、あっという間に雫がこぼれ落ちる。
「ン、ぁ、んぁ、ん……ッ、ン……っ」
「夜鞠くん、声抑えたら苦しくなっちゃうよ」
「だっ、て……っ、こえ、きもちわるい、でしょ……」
「気持ち悪くなんてないよ。俺夜鞠くんの喘ぎ声好きだよ。かっこいい声が上擦るのすごいかわいい」
「っふ……、ぅ、ン……っ、ン、ン………ッ」
夜鞠は首を振って自分の手の甲を噛む。鈴介はその手を掴んで、ベッドに縫い付けた。
「俺聞きたいな、夜鞠くんのかわいい声」
「あ゙……っ、ぁ……っ!! や、だ、鈴介くん、ぁ、あ、……嫌……、で、す……ッ」
「……ほら、顔真っ赤ンなっちゃってる。ちゃんと息吸わなきゃ」
夜鞠は胸を上下させて荒く息をする。
「はぁ、ぁ……、ん……、は……」
「……うん、そう。ゆっくり、ゆっくり」
「ぁ、は……っ、あ……ッ、ア……ッ、ンッ、んん……ッ!」
夜鞠の性器を扱きながら、鈴介は腰を振る。ゆっくりと亀頭を擦ると、夜鞠の身体はびくんと大きく跳ねた。
「あ゙ッ、ぁ゙……ッ!? も、やだ……っ、そこ、ばっかりしない、で、くださ……ッ、あ、あ……っ」
身体が、思うように扱えない。何度も射精したせいか上手く精液を出せず、いつもならとっくに射精しているような快感を、ずっと浴びせられている。
熱を燻らせて辛そうにしている夜鞠の顔を見て、鈴介は性器への愛撫を強くした。
「っ、ン゙ン……ッ! あ゙……ッ、は……ッ、ぁ、あ……!」
「……は、ぁ……、よかった、イけそうかな? びくびくしてる……ちょっときついね」
鈴介は心配そうな顔で夜鞠の頬を撫でる。夜鞠が、慌ててぎゅっと鈴介の手を握った。
「こ、の……まま……」
夜鞠は鈴介の手のひらに擦り寄る。灰色の瞳は鈴介を見据えて、ふっと蕩けた。
「は、っ、はぁ……っ、っ、激し……っ、……ッ! イきそう、ですか……っ?」
「……っん、イきそう……っ、は、ぁ……っ」
「ぁ、は……っ、僕も……っ。鈴介く、ん……もっと、強く……ッ」
鈴介は、律動を更に速めて、夜鞠の性器の先をぐりぐりと指で押し込む。夜鞠の身体がびくっと大きく跳ねた。
「あ゙、は、ぁ、はぁ、は……ッ、…………ッ、あ゙、ぁ……ッ!」
「ぁ……ン……ッ! ん、……は…………ぁ」
夜鞠の腹に精液が散る。びくびくと小さく痙攣する腹と、青い蝶があまりに卑猥で、鈴介はすっと笑った。
「あ……、っ、ぁ……、ぁ………………」
「は、ぁ……っ、ン……っ、は……きもちい……。吸い付いてるみたいなの……自分でもわかる……?」
「は、ぁ…………。わかり、ます……」
夜鞠は肩で息をして、ばくばくと鳴る心臓の音を聞いていた。
「イキ上手だねぇ、夜鞠くん。かわいくってどうにかなっちゃいそうだった」
「…………君も好きですね……僕を虐めるのが」
鈴介はゆっくりと性器を引き抜いて、ゴムを外す。簡単に結んでゴミ箱にティッシュと一緒に捨てていたら、後ろで夜鞠がゆっくりと上半身を起こした。
「……大丈夫?」
「…………うん。鈴介くんは、今日すごく気を遣ってくれてましたね」
「えっ、だって……夜鞠くん慣れてないし……」
「そうでも、そんなに気にしてくれなくていいんですよ。僕丈夫なので」
夜鞠は膝を抱え込んで、くすくす笑う。
「……次は、もっと激しくしてほしいな」
鈴介は頬を染めて目を逸らす。彼が足をすり合わせる仕草に夜鞠はゾクッとした。
「…………知らない。そうやって煽るくせに、顔見せても声出してもヤダって言われて俺どうしたらいいかわかんないもん」
「それは……すみません……」
「いいよ、今度はヤダも言えなくしてあげる」
鈴介は、呟いてから、一度目を伏せる。それから、夜鞠を見つめて口を開いた。
「……夜鞠くん……」
「そうでしたね」
夜鞠が腕を広げると、鈴介はその中へ飛びついた。間髪を入れず、夜鞠の口を塞ぐ。
「……ん、……ふ……」
「すき……、夜鞠くん大好き」
耳の縁をなぞられて、夜鞠は眉をひそめる。鈴介の背に腕を回して、その身体を抱きしめた。
「……ン……ッ! ぁ……、ぅ……」
びくびくと勝手に身体が跳ねた。彼とキスをしているだけで、身体の奥を侵されているような気がするのは、どういうわけだろうか。
「ン、ん……っ、ン、ぁ……」
「かわいい……」
身体がふわふわする。脳がとけて、まるで淫らな夢の中にいるような心地だ。
「ン、は……っ、ン……ッ!? ン……ッ、ぁ……ッ、あ……」
「……夜鞠くん?」
鈴介は一度口を離し、夜鞠の顔を見た。
夜鞠は、口を開けたまま、とろりと呆けた顔をしていた。鈴介は夜鞠の舌を絡め取り、その身体の反応を楽しむ。
夜鞠の身体はぴくぴくと小さく跳ね、全身を快感がゆっくり支配していく。
「……きもちいい……」
とろけた声で、夜鞠は呟く。夜鞠の性器から、白い液体がゆっくりと勢い無く押し出されている。
「ン……っ、ぁ……っ、ふ……」
びくびくと、身体の痙攣が止まらない。鈴介は一度口を離して、夜鞠の腹に手を当てた。
「……触ろうか、夜鞠くん」
「……んぁ、なに、を……?」
「ちんちん。上手にイけてない」
夜鞠は小さく首を振る。
「いい……、いいです……。これ、すごくきもちいいので……」
ぼんやりとした声を出す夜鞠を見て、鈴介は首を傾げる。
「……眠たい?」
「うん……少し……。なんか、気持ちが良くて……頭が、回らなくて……」
鈴介は夜鞠をベッドへ押し倒す。夜鞠はとろとろと瞼を閉じてしまいながら、鈴介のキスに応えた。
「……は、……ん……、ん……、んん……」
「寝ていいよ。頑張ってくれたから、疲れちゃったのかな」
「鈴介くん……、キスして……」
「うん」
鈴介は、夜鞠の頭をなでながらキスをする。
「……ふふ……大好きです、鈴介くん…….」
「……うん、俺も好き。だいすき」
鈴介は、頬を染めて柔らかく微笑んだ。
顔を離して、夜鞠の頬に指を滑らせる。それから、夜鞠のピアスを外して、髪を撫で付けた。
「…………おやすみ、夜鞠くん」
頭を撫でる鈴介の手のひらを、夜鞠が寝ぼけ頭できゅっと掴む。鈴介はくつくつ笑って、掛け布団を掴むと、夜鞠を抱きしめるように横になった。
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