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SNS投稿動画✦side蓮✦2

 撮影の空き時間にSNS動画の第五弾を撮る。  今回はファンの子たちも後ろに並び、みんなに囲まれての撮影だ。ちょっと新鮮で楽しい。    今回のお題は、お互いの好きなところ。 「蓮の好きなところはね、ワンコなところかな」 「え、ワンコ?」 「そう。ワンコみたいに、めっちゃ可愛いところ。時々しっぽが見える」 「しっぽついてないよっ」 「ははっ」 「秋さんの好きなところは……優しくてあったかいところかな」 「俺あったかいの?」 「うん。あったかい。一緒にいると、なんか胸がほわぁってあったかくなる」 「そういうとこな」 「ん?」 「言うことが、もう可愛い」 「かわ…………」  「はいっ。蓮が可愛いのがすごく伝わったところで恒例の『今日食べたい夕飯』でーすっ。俺はね、あっさりしたものがいいなぁ。あ、蕎麦が食べたい。天ぷら蕎麦!」 「秋さんそれ、あっさりしてないよ」 「あれ?」 「じゃあ俺は、ハンバーグが食べたい」 「本当に蓮は期待裏切らないな」  ぶはっと秋さんが吹き出して、スタッフも笑っていた。わけがわからない。 「え、何?」 「みんなも、そろそろ分かってきたと思うけど、蓮はこういうやつですっ」  スタッフが爆笑した。 「え? 何なに?」 「お前の食べたい夕飯、全部小学生の好きな夕飯ランキングな」 「……え、そうだった? 前回なんだっけ? あ、カレーだ」 「あと唐揚げと、ラーメン」 「オムライス……」 「ははっ。な、めっちゃ可愛いだろ?」  と、秋さんは声を上げて笑った。 「もう分かったから、可愛いとか言わないでっ」  可愛い可愛いと何度も言われ、恥ずかしくて顔がほてる。もう早く終わってほしい。   「ではっ。蓮の可愛さが存分に伝わったところで、放送前スペシャル第五弾、ありがとうございました!」 「あ、りがとう、ございました!」  やっと終わった。とホッとしたとき、秋さんが突然手をつないできた。 「……えっ」 「ちょっと今から蓮と手つなぎデートしてきまーす」 「えっ! ちょっ」 「行ってきまーす」  つないだ手をカメラに向けて、にーっと秋さんが笑う。 「蓮、行こうぜ。あっちの商店街」 「え、でも、撮影は?」 「許可もらったもーん」 「もーん、って……」  楽しそうな秋さんが俺の手を引っ張って、すぐ横にある商店街に向かう。  え、本当に手つなぎデート?  ギャラリーもそのまま追いかけてきた。迷惑にならないのかなと心配になったが、撮影許可を事前に取っているという。 「え、じゃあこれって予定通りってこと? 俺だけ知らなかったの?」 「蓮に教えないほうが絶対面白い動画撮れるじゃん」 「ええっ! ひどいよ秋さん……」 「いやいやいや、スタッフ全員共犯だからな?」  俺たちを囲っているスタッフとファンの子たちみんなが、楽しそうに声を上げて笑った。  秋さんとの商店街が思いのほか楽しすぎて、はしゃいでしまった。  手はずっとつないだままだった。こそばゆかった。  その動画も短いけれどSNSに投稿された。  翌日、SNSのコメント欄を見た秋さんが、面白がって俺にも見せてくる。 「あきれん、何度見ても攻めと受けが逆っぽい。ドラマどうなるの? だって」  笑いながら次々と読み上げる。 「秋人は男前だし、蓮は可愛すぎる。もうこの二人完全にカップルだよね? だって。俺たちカップルだって。完全にって付いてるし」 「……秋さんのせいでイメージガタガタだよ。どうしてくれるの」 「いやいや、蓮が可愛すぎるのが原因だろ?」 「秋さんがそう仕向けてるからじゃんっ」 「えっ。蓮が『じゃん』とかめずらしい。可愛い」 「今のはどこもこれっぽっちも可愛くないよっ」 「ははっ」  俺がどんなに怒っても、秋さんはちっとも反省してくれない。撮影が再開されるまで、俺はずっとSNSを見せられた。  秋さんは、すごく楽しそうにずっとスマホを見てる。  ファンの子たちの反響が本当に嬉しそうで、そんな秋さんを見てるのが俺も嬉しくて、なぜか胸があたたかくなった。  

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