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嫌われてる?✦side秋人✦4

 鼻の奥がツンとして痺れるほど、熱い涙がこみ上げてくる。   「…………蓮……」  想像以上にひどい涙声が出た。 「……秋さん?」  怪訝そうに眉を動かして目を開いた蓮は、涙目の俺を見て、狼狽したようにオロオロした。 「秋さんっ、どうし――」 「大丈夫。なんでもない」    涙を隠すように、蓮の肩口に顔をうずめた。  蓮は一瞬体を揺らしたけど、それよりも俺を気づかってくれた。   「あ、秋さん。やっぱり体調が……」 「……ん。でも大丈夫」 「……秋さん」  優しい声が耳に嬉しい。蓮の手が、背中を優しくさする。  ようやく、息ができた気がした。  まるで水の中にいるみたいに苦しかったのに、今は嘘みたいに呼吸が楽だ。 「蓮……今の話さ」  つぶやくように話し始めると、蓮はギクリと体を震わせた。  だから安心してほしくて、蓮の体を包むように腕をまわした。ビクッと身体を震わせる蓮が可愛くて、顔がゆるむ。  抱きしめるみたいになってしまったが、今の俺は高揚感に包まれていて、ささいなことは気にならなかった。   「そんなことで、きらいになったりしないから」 「ほ、本当……?」 「きらいになるわけねぇじゃん」 「…………でも、気持ち悪――」 「悪くない。だって俺、蓮のことすげぇ好きだし」 「あ……俺もっ、秋さんが大好き」  相変わらずワンコのような蓮が可愛くて、嬉しくて胸がいっぱいになった。   「……俺さ。蓮と……ニコイチになりたいんだけど……」 「はぇっ!?」 「……だめか?」 「だめじゃない!」 「じゃあ、もう俺たち……ニコイチな」 「はい、嬉しいです!」 「それ敬語な」 「え、あれ」  肩から離れて体を起こし、ワンコをあやすように蓮の頭を撫でまわした。 「あ、もうまた!」 「ははっボサボサ」 「だから誰のせい?」  蓮とニコイチになれたことが死ぬほど嬉しい。と言ったら蓮はなんて言うだろう。でも恥ずかしいから絶対に言わない。  離れていくのかと恐れたはずの蓮が、また俺の所に戻ってきた。ただそれだけで嬉しい。  涙を落ち着かせて、時間になるので二人でスタジオに向かった。   「で、あれで克服できたのか?」 「……うん、たぶんできたと思う。とにかく秋さんに知られたくないって気持ちが原因だったから、もう開き直ってやれるし……」 「てか俺さぁ。蓮の心臓の音が毎回すげぇの、かなり前から気づいてたけどな」 「………………っ」  ふっと蓮の姿が隣から消えたので後ろを振り返った。  足を止めて顔を赤く染めた蓮が「やっぱり聞かれてた……」とつぶやいて、羞恥心と戦っているみたいな顔をしているので、俺はケラケラと笑った。 「早く行くぞー」  その後の蓮は、まるでつきものでも落ちたような変わりようだった。  あの切ないシーンを完璧に演じきった蓮は、本当に見ほれるくらい格好良い。  これはまたファンが増えるなぁと思っていたら、監督のカットの声で、みるみる間に顔が真っ赤になった。  いったいどこに、そんな切り替えスイッチがひそんでいるんだろう。    本当に蓮は、可愛くて面白くて大好きな、俺のニコイチだ。  

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