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キスの意味✦side秋人 6

「俺も……死んじゃいそうだから……死ぬ前にもっかい、キスしよ」  俺がそう言うと、涙声の蓮に弱々しく怒られた。 「死ぬ前とか言わないで。もうずっと、これからいっぱい、キスするんだから」 「……うん。いっぱい、しよ」  顔を上げて、二人で見つめ合って微笑む。  蓮は、チュッと軽いキスをした。   「…………そんなんじゃ、足りねぇよ……」 「……うん。俺も、足りない」  今度は深く深く、唇を合わせた。   「んっ……」  想いが通った幸せなキス。  ずっとほしかった蓮の深いキスに、もう身体中が溶けそうで、頭の芯がしびれるほど気持ちがいい。  そのまま玄関で、何度も何度も深くキスを交わした。   「はぁっ、んぅっ……」  なにこれ……こんな激しいキス、初めて。  気持ちの良いところを、的確に攻めてくるようなキス。  蓮の舌先に自分の舌がふれる、それだけでも気持ちがいいのに、何度も絡め取られて吸われて頭がぼうっとする。もうなにも考えられない……。  キスだけで、下半身が反応してうずいた。   「んっ、ぁ、れ……れんっ」 「……ん?」  顔を離して、息が上がったままで蓮に問いかけた。   「……なんか……お前……、キスうますぎねぇ……?」 「え、えっと……よく分かんない。嬉しくて、ただもう夢中で」  真っ赤な顔で瞳をうるうるさせてる蓮は、もうただただ可愛い。  それなのに、なんだよ……。   「…………なんか、ムカつく」 「……え?」 「お前、どんだけ経験豊富なの……」 「……っえ」  言ったあとに、しまったと思った。  過去に嫉妬するとか、なに俺……ウザすぎる。  本当にどうした、俺。  蓮が相手だと、初めての感情続きで戸惑う。 「ご、めん、今のなし……忘れて」  馬鹿みたいな嫉妬をして、恥ずかしくなって顔がほてる。  すると、蓮が首を傾げた。   「秋さんだけだよ?」  照れたように可愛い顔で、そう言い放った。 「…………え?」  一瞬、言われた意味が理解できなかった。  俺だけって何? 「俺、秋さんとしかキスしたことないよ」 「…………え?」  俺としかしたことない……って、え?  じゃあ、撮影のキスがファーストキス?  ディープなのは今のが初めてなのか……?  そんなうまいのにありえないだろ、と思ったが、キョトンとした顔で俺を見る。   「…………もしかして……前に雑誌撮影のとき言ってた、経験がないって話は……」 「……うん。本当の話。だって誰とも付き合ったことないし。好きでもない人となんてしたくないし」 「……え、じゃあお前、童貞なの?」 「…………秋さんて、言葉選びがいっつも露骨だよね……」  こんな、どこで覚えてきたんだよ、っていうようなエロいキスをしておいて、まさかの童貞に開いた口が塞がらない。  この意味の分かんないエロいキスは、俺しか知らないんだ。  俺が、初めてなんだ……。  思い返せば、蓮はずっとピュアピュアだった。  本当に免疫がなかったんだ。  マジでどうしようかと思うくらい、可愛すぎる。   「秋さん……もしかして、引いた?」 「まさか。お前、ほんと最高」    首に腕をまわして、キスをした。   「蓮……好きだよ」 「秋さん、大好き」  キスをしながら二人で好き好き言い合って、見つめ合って笑った。 「秋さん、そろそろ中、入ろ」 「……だな」  二人でクスクス笑って立ち上がって靴をぬぎ、自然と手をつないで歩きだした。  手も胸の中も、もう全部がくすぐったい……。  俺は寝室に向って、蓮はソファに向かった。方向が違って手が離れそうになる。   「ち、ちょっと待って、秋さんっ。なんでそっち?」  慌てたように、俺の手をクンッと引く。   「なんでって? 両想いだってわかったんだからこっちだろ?」  だってさっきまで、そういう雰囲気だったはずだ。   「……っは? いやいやいや、なんでっ」 「…………なんだよ。やっぱ…………男とはできないとか?」 「そっ……そうじゃなくてっ」 「…………じゃあ、なんだよ」    蓮にすり寄って、ぎゅっと抱きついた。 「俺……蓮が、ほしい……」    蓮の心臓がドッドッドッと暴れてて、拒否されてるわけじゃない、と安心する。   「……き、今日はだめっ。何も準備してないからっ」 「準備?」 「ロ……ローション……とか」 「そんなの、なんでもいいじゃん。ハンドクリームとかない? 油は? 油でいいよ」 「ゴ……ゴム、もないしっ」 「なしでもいいって。かき出せばいいってなんかに書いてあった」 「か…………っ、だ、ダメだってばっ」 「…………なんでだよ。もう俺…………蓮が足りないんだってば……」  さらに強く抱きしめると、蓮は、はぁぁ、と深い息をついた。  

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