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両想いのその先は……✦side蓮✦1
秋さんが死ぬほど可愛く暴走していて、もう理性が吹っ飛びそうだった。
油でいいとか、かき出すとか言い出す秋さんの口を、ずっとキスでふさいでおこうかと本気で思う。
秋さんは、どっちのつもりで誘ってるんだろう。
「……秋さん」
「ん」
「……じゃあ、あの……俺が受ける方なら。今からでも、いいよ」
「……蓮が、受け?」
「うん」
こんなに準備が整ってない状態で、二人とも男同士は初めてなのに秋さんを抱けない。傷つけたくない。
でも秋さんがどっちのつもりか分からないから、そう言ってみた。
「……え、お前、抱かれる側がいいの?」
すごいびっくりした顔で、秋さんが見上げてくる。
「……どっちがいいかって言われたら……秋さんを抱きたい」
正直にそう答えたら、あきらかにホッとした秋さんにドキッとした。
「だよな。蓮が受けとか、想像できねぇもん」
「……秋さんは……抱かれる側でいいの?」
「……うん。……つうか、蓮を抱くって違和感しかねぇし。それに蓮に抱かれるの想像したら、なんか幸せすぎて死ね……そ…………」
そこで秋さんが突如固まって、みるみる顔を真っ赤に染めた。
「…………まっ……て。聞かなかったことにしてっ。……うぁー…………恥ずか死ぬ……」
ポスッと俺の胸に頭を預けて、額をグリグリと押し付ける秋さんが、もう死ぬほど可愛い。
俺のほうが先に死にそうで、秋さんをぎゅっと腕の中に閉じ込めて、髪に顔をうずめた。
「秋さんが受ける方なら……今日は絶対にダメ。ちゃんと準備してからにしよ」
グリグリがピタッと止まって、勢いよくバッと秋さんが顔を上げたので、あごを打った。
「痛っ」
「なんでだよ。お前が受けならよくて、なんで俺じゃダメなんだよっ」
本気でムッとした顔になる秋さん。でもこれだけは譲れない。
「絶対に、傷つけたくないから。すごくすごく、秋さんを大切にしたいから。それに……そんなに焦らなくても、これから俺たちもうずっと一緒でしょ?」
「……………っ」
秋さんの瞳にじわじわと涙がにじんで、光の反射でキラキラ光る。
顔合わせで初めて合ったときを思い出す。
オーラでキラキラしてて、綺麗すぎて目が離せなかった。
すごく優しくて、あったかくて、カッコ良くて、時々すごく可愛い。そんな秋さんが今日からは俺の恋人なんて、本当に夢みたいで怖い。
一生分の幸せを、今日一日でもらってしまったような気分だ。
「……お前……その言い方……ずりぃだろ……」
秋さんが、キラキラの涙をポロっとこぼす。
すごくすごく綺麗で見惚れてしまった。
「蓮……ほんと……めっちゃ、大好き」
と言った秋さんに、首に腕をまわして引き寄せられて唇をふさがれた。
深くなるキス。秋さんのキスを味わいたくて、今度は攻めずに受けるだけにしてみた。
ゆっくりと優しく口内を舐められる。
くすぐったくなるくらい、愛のこもった優しい優しいキス。
なんだろう、舌の動きがすごく可愛い。俺の舌に、動けよ、というようにツンツンしてくる。
もうたまらなくなって舌を絡めた。
幸せで胸がいっぱいになる。
ずっとしていたいくらい、気持ちがいい。
ゆっくりと唇を離して、秋さんが胸に倒れ込んできた。
「はぁ……好き。どうしよ……好き。めっちゃ……カッコイイ……蓮」
「え……」
秋さんに、役以外でカッコイイなんて初めて言われた。
だっていつも可愛いばっかりだ。
「秋さん、もう一回言って」
「ん……何を?」
「カッコイイって」
「え?」
「初めて言われた、カッコイイって」
「え? そんなこと、ねぇよな?」
「役のことでしか、言われたことないもん」
秋さんが、ふはっと笑った。
「いや、今のめっちゃ可愛いかったからもう無理」
クスクス笑って胸に頬をすり寄せてくる。
また可愛いって言われた……。
いいかげん座ろうか、となって二人でソファに落ち着いたとき、突然のチャイムの音。
「えっ、こんな時間に誰だろ……」
もうすぐ二十一時になる。
インターホンの画面を確認すると、美月さんだった。
首を傾げて通話ボタンを押す。
「美月さん? どうしたんですか?」
『蓮くん、ちょっとたぶん緊急事態! エントランス開けて!』
「えっ、緊急事態って、どうしたんですかっ?」
『いいから、とりあえず開けてっ』
焦ったような美月さんに、急いでエントランスを解除した。
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