71 / 173

幸せな時間✦side秋人✦5 ※

「んん、……んっ」 「……全部……入った」  ささやかれた言葉に、俺は思わず繋いでいた手をほどいて蓮の首に抱きついた。  目の前にチカチカ星が飛んで、全身に電流が走る。息が……うまくできない。 「あ、秋さん、大丈夫?」  蓮の手が優しく肩をさすってくれて、俺はやっと呼吸を取り戻した。 「……あ……れんのが……中で、ドクドク……してる……」 「……あ、秋さんっ」 「あー、……やべぇ、どうしよ。……すげぇ幸せ……」  天にも上る気持ちってこんな感じだろうか。本気でそう思った。  「俺も幸せ……」と、まるで喉の奥から絞り出したような切ない蓮の声に、もう涙が抑えられなかった。   「……あ、秋さんっ、痛い? つらい?」  顔を上げた蓮が心配そうに俺を見て、涙を吸い取るように目尻にキスをする。 「泣いてるし……ずっと震えてる……」  肩をゆっくりとさすってくれる、蓮の手が優しい。 「痛くねぇよ……。お前と……繋がれて、幸せで……震えが止まんねぇだけ……」  そう言うと、俺の中の蓮がドクンと脈打った。   「……あ、また……おっきくなっ……た……?」 「あ、秋さん……あんまりそういうこと、言わないでっ」 「……だって、俺の中で蓮を感じるって……すげぇ嬉しくて……。本当に……繋がってんだなって……」 「……うん。本当に繋がって、ちゃんと一つになってる」  ちゃんと、一つに……。 「ニコイチだな」 「ニコイチだね」  声がそろって二人で笑った。 「蓮……もう動いて」 「…………っ」 「もっと蓮を感じたい……」  心配そうな瞳で、蓮が俺の頬にふれた。 「……痛くない?」 「全然、痛くねぇって。大丈夫」  俺の中の蓮はもうずっとドクドクいっていて、本当ならすぐにでも動きたいはずなのに、ずっと俺の心配ばかり。  すごい大事にされてる。本当に幸せだ……。 「好きだよ……蓮。もっとお前が……ほしい……」 「……あ、秋さんっ。も……俺、本当は全然余裕なくて……優しくできないかも……」 「うん、大丈夫だから……きて」 「……秋さん……っ、動く、ね……」  余裕ないと言ったくせにやっぱり動きはゆっくり優しくて、すごい蓮らしいなと笑みがこぼれた。

ともだちにシェアしよう!