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番宣✦side蓮✦2
「いや、なんかもうお二人を見てるだけで、ほっこりしてしまいますね」
「本当ですねぇ! では最後にドラマスタッフから撮影中のエピソードがいくつか来てますのでご紹介しますね」
女性が再びフリップボードを持ち上げてエピソードを読み上げた。
「怒られて泣いてしまったとき、久遠さんが追いかけてきて励ましてくれました。教えていただいた対策、とても効果があります。本当にありがとうございました。――こちらは匿名希望さんです。なにか対策を教えてあげたようですが」
「ええと、まあ、たいしたものではないんですけど、お役に立てたみたいで良かったです」
どんな対策なのかを聞かれて簡単に説明しながら、困ったように首の後ろをかいて照れている秋さんが、めちゃくちゃ可愛い。
「これは観ている方みなさん今日から使えそうですね! 『なんて可哀想な人なんだろう』で心の中で舌をべーですよ、メモってくださいねっ」
「あ、でもなんでもかんでも使っちゃダメですよ。本当に理不尽なときだけ使ってください……」
スタジオのみんなが笑った。
次のフリップボードが上がる。
「毎日三十分前にはスタジオに入って、スタッフの作業を見守ってくれる神宮寺くんにとても感動しました。ワンシーンが出来上がるまでの工程を正確に理解して、感動すると言ってくれた神宮寺くん、本当にありがとう。――こちらはカメラマンの黒田さんからです。毎日見守っていたんですか?」
「いえ……ただ見ているのが好きで……。こんなにたくさんの人達の色々な力が合わさってドラマが出来上がるんだなぁって……」
「ご自分のドラマを本当に大切にされてるのが、とてもよく伝わってくるエピソードですね」
ただ見ていただけなのに美談のようになってしまっている。なんだか申し訳なかった。
次のフリップボードが上がる。
「秋人くんに『蓮くんの足を引っ張りたくない。蓮くんの初主演作だから、最高のドラマにしたい』と言われたときには、本当に素敵なニコイチの二人だなと思いました。――こちらは監督さんからです。本当に素敵なエピソードですね」
こんな話初めて聞いた……。
俺の足を引っ張りたくないって、なに……?
秋さんのほうが大先輩なのに……。
「秋さん……」
「え、ちょっとまって……こんな暴露までされちゃうんですか? 恥ずかしいんですけど……っ」
「素敵なエピソードだから、大丈夫ですよっ!」
「いやいやいや……えぇ……っ?」
顔をほんのり赤く染めた秋さんが、俺の視線に気づいてるのに見ないようにしてるのが分かる。可愛くて今すぐ抱きしめたい。ズムズムする。
次のフリップボードが上がる。
「撮影中、仲のいい二人に微妙な距離ができてスタッフ一同騒然となったことがあります」
えっ、と思ってギクリとした。
ちらっと秋さんを見ると目が合った。
これ、もしかしてやばいかな……と緊張が走る。
「でも台本で別れた二人が寄りを戻すシーンの日には、また仲良しの二人に戻っていて、別れのシーンのためだったんだ! とみんなでホッとして手を叩いて喜びました。二人のイチャイチャがもう見れないので寂しいです。――女性スタッフ一同、だそうです。やっぱりシーンに合わせて、普段から意識を変えていらっしゃるんですか?」
やばい話にならなくて良かった、と思わずホッとした。
俺は撮影と普段とは切り離す方なので、あまり意識を変えていない。
どうしようと思ったら秋さんが口を開いた。
「そうですね。今回は特にお互い初めてのBLドラマで、スタートから距離感のおかしい役だったので、自然に振る舞えるように普段から距離感のおかしい状態でずっといました」
「女性スタッフみなさんが、お二人のイチャイチャが見れなくなって寂しいとおっしゃるくらいですもんね」
自然に振る舞えるように、っていうのは絶対に違う気がする。
初めの頃は、俺をからかうとかイジるとかそんな感じだった。絶対に。
「だからもう、なんか蓮にどっかさわってるのが普通っていうか、さわってないと変な感じで」
秋さんの言葉に、俺もあとを続けた。
「そうなんです。気がついたらいつもどこかふれあってたので。撮影が終わっちゃって、なんかずっと落ち着かないです」
これくらいなら話しても大丈夫かな、と慎重に話してきたが、大丈夫だっただろうか。
最後の番宣がもうすぐ終わる。
今日放送の予告が流れて、俺たちのPRコメントで出番が終了だ。
「別れた二人がどうなるのか、皆さん最後まで見守ってください」
「キスシーンも見納めです。みなさん、観て下さいねっ」
スタッフのエピソードにも寄りを戻すと出てきたし、秋さんもキスシーンがあると言っちゃってるし、思わず笑ってしまう。
「久遠秋人さんと神宮寺蓮さんでした。ありがとうございました!」
「ありがとうございました」
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