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番宣✦side蓮✦1

「今日のゲストは、今夜ドラマが最終回の、このお二人が来てくださいました!」  最終回当日、朝からあちこちの番組に番宣でお邪魔していた。  俺は今まで端役ばかりだったから、今回のドラマの初回放送時が初番宣だった。今回は二度目。  番宣だったり、トーク番組だったり、歌番組だったり。普段から慣れてる秋さんは司会者からの質問にポンポンと答えていて、俺は尊敬の眼差しで見ていた。 「久遠秋人さんと神宮寺蓮さんです! 今日はよろしくお願いします」 「よろしくお願いします」  俺たちは声を合わせて言った。  ある程度の質問を予想して答えを用意してきている。それで終わればいいなと、慣れていない俺はずっと緊張していた。 「お二人が出演のドラマは、本当に色々と注目を浴びてますね」    司会者の男性がそう切り出すと、女性アナウンサーが引き継いだ。   「そうなんです。ボーイズラブのドラマということだけではなく、他にもこんなに注目されているんです」  女性がフリップボードを持ち上げた。  いくつかのキーワードが並んでいて、一番上が隠されている。  あきれん、関連ワード独占、雑誌の再販……。  一つ一つを挙げて詳しく説明され、時々質問が飛んできた。 「次は、ドラマとは真逆の二人! これはどういうことですか?」  この質問には、秋さんが楽しそうに答えた。 「ドラマでは、蓮は男らしくてカッコイイ役なんですけど、素はもうめちゃくちゃ可愛いんですよ。本当に真逆で」 「か、可愛くは、ないです……」  何を言っていいのか分からなくて、とりあえず反論しておいた。 「こんな風に、すぐ顔が赤くなったり」 「え、今赤い?」 「うん、赤い」 「嘘……っ」 「本当」  ふはっと秋さんが笑って、スタジオにも笑いが起こった。 「それから俺もドラマの中では、静かでおとなしい役どころです」  「なるほど、お話を聞くだけでも真逆ですね。ではドラマではどう違うのか、神宮寺さんのカッコイイシーンと久遠さんの可愛いシーンをご用意しました。こちらをどうぞ」  モニターにドラマのワンシーンが流れる。   『お前は、俺が好きだろ』 『……っ』 『お前は、俺だけが好きだっ。そうだろっ?』 『……なんだよ、それ……』  なんでカッコイイと可愛いシーンでキスシーンを選ぶの……。普通のシーンでいいのに……。  恥ずかしすぎて、ますます顔に熱が集まる。 「本当にドラマではお二人とも別人のようですね!」 「いや本当に真逆ですね」 「神宮寺さんの顔が真っ赤になっちゃいましたね。今回、この素の神宮寺さんとドラマとのギャップにやられちゃう女性が、後を絶たない状態だそうですよ」  後を絶たないなんて、そんなの初めて聞いたけど……っ。  番宣ってこんなに恥ずかしい思いするもんなの?  隣では秋さんが俺を見てずっとクスクス笑って楽しそうだ。 「そして最後、一番注目を浴びたのが」  隠された部分がはがされる。   「キスシーンが多い! 本当に多かったですよね。今流れたシーンもキスシーンでしたね。男同士でのキスシーンはどうでしたか?」 「めっちゃ楽しかったです」  秋さんがニコニコ笑って即答した。   「抵抗とかは全然なかったし」 「そ……うですね。抵抗は全然なかったけど、俺は初めてのキスシーンだったので、もうドキドキし過ぎて大変でした」  俺の言葉に、司会者二人は楽しそうに笑った。 「さっき流れたキスシーンの裏では、実はドキドキしていたんですね」 「そ……ですね。はい」  あのシーンはドキドキじゃなくて、別のものだったけど……と思いながら答えた。  「抵抗は、本当に全然なかったんですか?」  男性が興味津々で聞いてきた。  目線が俺を見てるので、あ、俺かと慌てて答える。 「もう秋さんが綺麗すぎて、ドキドキしすぎて、抵抗とか考える余裕もなかったです」 「俺も全然なかったです。ドラマの中でニコイチを演じてるんですけど、もう実際も俺たちすっかりニコイチで」  な、と秋さんが笑顔で同意を求めてきたので、コクコクとうなずいた。 「お二人は本当に仲がいいそうですね。神宮寺さんが最近、久遠さんと同じマンションに引っ越されたとか」 「あ、はい。ちょうど引っ越し先を探してて、秋さんの事務所の方に紹介してもらいました。昨日、引っ越ししたばかりです」  予想していた質問に、ホッとしながら答えた。 「ニコイチのように仲が良いということですから、きっとお部屋を行き来されるんでしょうね」  これにも秋さんが答えてくれた。   「そうですね。もう今から楽しみで、夜な夜な一緒に何しようかって考えてて」  夜な夜な、の言葉に変なことを想像してしまってビクッと反応をするところだった。  違う違う。夜な夜なすることをじゃなくて、何をしようかと夜な夜な考えてただけだ。恥ずかしすぎる。 「それで一緒にやろうと思って、ゲームを買いました」 「久遠さんはゲームがお好きなんですか?」 「いえ、それほどじゃないんですけど、蓮とやったら楽しいかなって思って」  本当に楽しみにしてそうな、ウキウキした顔の秋さんを見て俺も嬉しくなった。

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