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最終話 LIVE〜みんなの前で✦side秋人✦終
MCになると京とリュウジがよく喋る。
俺はいつも、相づちをうったり横やりを入れたり。
でも今日は違う。俺はどうしても今日ここで、やりたいことがある。
「そういえば、今日は秋人の大好きな人が来てるんだよな?」
リュウジがナイスなフォローを入れてくれた。
会場に、悲鳴か歓声か分からない声が響き渡った。
「そうなんだよ! 実は今日、俺の恋人が来てくれましたーーーー!」
たぶんこの瞬間、会場のみんなが同じ人を連想した。
はっきりとした歓声だけが、再度響き渡る。
「上がってこいよ! 蓮っ!!」
割れんばかりの歓声と拍手。
何も伝えてなかったから、蓮は驚いた顔で俺を凝視して首を横にふった。
「ごめんみんな、照れ屋な蓮をみんなで誘導してくれますか? そこにいまーす!」
蓮は会場から注目と歓声と拍手を浴びて、諦めたように重そうな足取りでステージまでやってきた。
「俺の恋人、蓮くんでーーす!」
「……ど、どうも。神宮寺蓮、です」
あきれんーーー!
蓮ーーー!
という声が次々と上がった。
「本当、めっちゃ照れ屋だねー」
「ドラマとのギャップやばいな」
楽屋では俺の変化に驚愕していたメンバーも、何事もなかったかのように蓮を構う。
蓮を見ると、ちょっとホッとしたように笑みを浮かべた。
「なんかあきれんてさ。ドラマとは立場が逆転してる感じが面白いよな」
「だろ? もう俺、蓮が可愛くって、めっっっっちゃ大好きなの!」
俺は叫ぶように言って、蓮の手を握った。
「え、え、え、秋さん!?」
驚いて顔を赤らめてあたふたする蓮に、会場中が笑った。
俺の発言も行動も蓮の反応も、もはや通常運転。ファンの子たちも誰も驚かない。
「あのドラマ、ほんとキスシーンすげー多かったよな」
「あれだけやったら、なんかもう普通にできちゃったりする?」
メンバーの質問に、真っ赤な顔で首をふって「できません!」と蓮は答える。
「俺はできるよ? ここでやっちゃう?」
きゃーーー!
やってーーー!
あきれんーーー!
会場の声がすごいことになった。
俺の言葉に、何言い出すの!? と言わんばかりの顔で蓮が怒り出した。
「無理だってっ!! 無理っ!! 今は撮影じゃありませんっ!!」
ドッと会場が爆笑した。
本当に可愛くてどうしよう。
ステージの上なのに抱きつきたくなった。
抱きついてもたぶん平気そうだけど、それよりも……――――。
「実は今日ここで、ちょっと宣言したいことがあるんだよね。みんな、聞いてくれるーーー?」
なぁにーーー!?
という声と歓声と少しのざわめき。
繋いだ手をぎゅうっと握り直すと、いったい何を言うのかと蓮が瞳をゆらしてオロオロとした。
声を出すとマイクが拾う可能性があるので、俺は唇だけで、大丈夫と蓮に伝えた。
深く息を吸って深呼吸をする。
目を閉じて、想像した。
本番は、二人でタキシードがいいかな。
神前式で羽織袴もいいな。
きっと蓮は、どっちも格好良い……――。
ゆっくりと目を開く。
俺は、大きく息を吸って、会場に叫んだ。
「俺たちはっ!! ドラマが終わってもっ!! これからもずーーーっとっ!! ニコイチでいることをっ!! 誓いまーーーーすっ!!」
今日一番の歓声と拍手が沸き起こった。
ざわめきはたぶんない。
良かった、と安堵する。
俺は蓮を見て、優しく微笑んだ。
伝わったかな。
伝わったよな?
蓮にだけ伝わればいい。
これは俺たちの、人前式。
ずっとずっと先の……本番までの、仮の結婚式――――。
蓮の瞳にじわりと涙が浮かんだ。
ちゃんと俺の気持ちが伝わった。
俺も嬉しくて泣きそうになる。
「異議のあるものはいませんかーーー!?」
リュウジが叫んだ。
いませーーーーん!!
まるで事前練習でもしたかのように、奇跡的に揃う会場からの声。
ぶわっと感情が高ぶって、涙がこぼれそうになる。なんとか必死で耐えた。
蓮を見たら、同じように耐えている顔。
やっぱり、キスがしたい。
今、この誓のあとのキスがしたい。
ほっぺにチュ、くらいならいいかな。
ファンサービス、ファンサービス。
アリだよな?
これはファンサービス。
自分に何度も言い聞かせた。
俺たちの人前式。
大勢の前で誓った言葉は『ニコイチ』だけど、俺たちの中ではもうニコイチは親友という意味じゃない。
蓮を見上げて、ゆっくりと顔を近づける。
蓮の頬にチュッとキスをした。
俺たちだけの誓のキス。
蓮はもう驚かなかった。
感極まったような顔で俺を見つめて、繋いだ手に力がこもった。
会場の歓声と拍手が、まるで祝福のように降ってくる。
俺は我慢ができなくなって、マイクの頭を背に押し付けて音を遮断する。
蓮の耳元に唇を寄せて、小さく小さく、ささやいた。
「蓮、愛してる……」
「お……俺も、愛してる……秋さん……」
初めて伝えた、愛してるの言葉。
幻想的にゆれる青い光の粒の中、二人で涙を浮かべて微笑み合った。
二人で一つのニコイチ。
もう二度と離れない、ニコイチ。
俺たちはこれでもう、本当にずっとニコイチだ……――――。
end.
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