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デートしたいっ!✦side秋人✦2

「な……っ」  真っ赤な顔ではにかむ蓮は、ご丁寧にキャップまで外している。 「バ、バカッお前っ、見られたらどうすんだっ」  慌ててキャップを目深にかぶらせ、まわりを確認する。  幸いなことに、こちらを注視していそうな人物はいなかった。マジで焦る。 「……お前、ほんっと……冗談通じねぇな……」 「え、くっつけないからやだって言ったの冗談だったの……?」 「そっちじゃねーわっ」  ちょっと傷ついたみたいな顔をする蓮の手を取って、「すげぇくっつきたいよっ」とぎゅっと握った。   「でもさすがにキスはまずいだろっ。お前テレビに出てる自覚あるっ?」 「ご、ごめんっ。俺もくっつきたかったから……嬉しくなっちゃって」  信号が青になって慌てて発進する。  握ったままでいたかったが、ぐっと我慢して手を離した。  まさかこの俺が、運転中に手を繋ぎたいと思う日が来るなんて本当に信じられない。  以前の俺は友人の話を聞いて、いやなんで運転中に手を繋ぐ? と呆れていたのに。  くっつきたい。手を繋ぎたい。でも事故はまずい。だめだ絶対に安全運転だ、と我慢した。   「蓮」 「うん……」 「しょんぼりすんな。可愛すぎてホテル連れ込みたくなるだろ」 「……へ?」  チラッと蓮を見ると案の定真っ赤な顔で、思わず笑みがこぼれる。 「ネズミーシーからホテルに変わりたくなかったら、その可愛いの封印!」 「……ど……」 「ど?」 「どっちも……嬉しいかも……」 「……おお、そうきたか」 「だって俺……行ったことないから」 「俺だって行ったことねぇぞ」 「え?」 「え?」  疑いの目を向ける蓮に、ため息が出た。 「……あー傷ついた。俺めっちゃ傷ついた」 「だ……だって……」 「お前は俺にどんなイメージ持ってんの? 過去の女、何人だと思ってんだよ?」 「え……いっぱい……?」  いっぱいって何人だよ。俺ってそんな節操のない男だと思われてた? 「お前耳かっぽじってよく聞けよ? 中学は、付き合ったかなんか分かんないの入れて二人。高校で二人。その一人はこの前話した女な。全部で四人。一番長くて三ヶ月? とかそんくらい」 「え、三ヶ月?」 「うん。何考えてるか分かんないって振られる。いつも。高一でデビューしたから仕事でいっぱいいっぱいだったし。あとはもう仕事一筋だったよ。ホテルなんて行ったことねぇしマジで。……信じられない?」 「……し、信じるっ」 「うん、信じて。俺……そんな簡単に付き合ったりしねぇよ」 「……そんなに格好良くて綺麗だったら、まわりがほっとかないと思って……ごめんなさい」  まわりがほっとかないってそれは蓮も同じだろ、と苦笑する。  本気でうなだれる蓮の帽子のつばを、俺はパンッとはたいて笑いかけた。 「夢の国、行くだろ?」 「……い、行くっ」  ハッとしたように元気に顔をあげる蓮がまた可愛くて、疑われてすねてた気持ちもどっかに吹き飛ぶ。   「夜はまた俺らの家、帰ろうな」 「俺らの家……うん、うん」 「俺らの家があるんだぞ? めっちゃ幸せじゃね? ホテルとかどうでもいい」 「本当だ、どうでもいいっ」 「だろ?」 「秋さん……大好きっ」 「ん。俺も」  手を伸ばして頭をワシャワシャしようとして、そうか帽子だったなと、ポンポンする。  なんとなく物足りなそうな蓮の顔に、ふはっと笑いが漏れた。  夢の国は本当に夢の国だった。  人混みすぎて、俺たちが全然目立っていない。すごい。夢の国バンザイ!   「秋さん、耳付けたいっ耳!」 「……お前、せっかく目立ってないのに……目立ちたいの?」 「だってここに来たら耳でしょっ」  そうなのか? 男でも? 本当に?  まわりを見るとカップルで付けてる男性はチラホラいた。……いやそもそも俺らのような野郎二人組が見当たらない。 「本当に付けるのか……?」 「だめ?」  返事もしないうちに勝手に帽子を取られ、耳を付けられた。 「秋さん可愛いっ!」 「……帽子被ってきた意味は?」 「……だめ?」  おそろいのネズミーの黒耳を付けた蓮がシュンとする。  ワンコなのかネズミなのかどっちなんだ。  どっちでもクソ可愛いな。   「よし、もういっそこれで堂々と歩くか」 「いいのっ?!」  めちゃくちゃ嬉しそうに破顔する蓮を見て、もうなんでもしてやりたくなった。  それに隠れようとコソコソするより、思いっきり堂々としたほうが逆にデートだとバレないかも。多少騒がれても、バレない方が安心だ。  そんなことを思っていたら、早速まわりが騒がしくなってくる。  キャーキャーざわざわしている中で二人で目を合わせて苦笑し、気にせずアトラクションを回ることにした。            

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