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じゃない人たちの、一方その頃。 (4)
「だからのぼせるって言っただろ……」
「ごめんなさい。大丈夫?」
真っ赤に充血したふたつのアーモンド・アイが、俺をじとーっと睨んだ。
「口移ししたら許してくれる?」
「……やだ。許さない」
ふてくされた顔で差し出された手にコップを持たせると、理人さんはゆっくりと上半身を起こした。
赤くなったり青くなったり忙しかった頬にも、すっかり血色が戻っている。
こくんこくんと水を飲むたびに上下する喉仏が、えろ……じゃなくて、かわいい。
空になったコップを片付け、隣に横になると、すぐに理人さんがピトッと張り付いてきた。
今日も熱中症警戒アラートが発令されるくらい暑かったし、湿気もすごいけれど、エアコンと冷感シーツのおかげで、比較的快適な夜を過ごせている。
こうして二人でくっついていても、理人さんの高い体温が心地良く感じるくらいだ。
「理人さん、もう眠いでしょ」
「そ、そんなことなッ……」
「身体が熱い」
むう……と不満を露わにしてから、理人さんは頭をグリグリ動かし始めた。
良い角度を見つけたのか、しばらくすると大人しくなる。
腕を抜き出し理人さんの背中に回すと、触れた肌はやっぱり温かかった。
眠くなると体温が上がるなんて、まるで子どもみたいだ。
ほんと、かわいい。
「佐藤くん……」
「はい?」
「好きだよ……」
「はい」
「だい……すき……」
途切れた言葉は、やがてすべての音を失った。
引っ張り上げたタオルケットで、細い背中を覆ってやる。
理人さんの額にそっと唇を押し当てると、闇に包まれた世界の上を、穏やかな寝息が漂った。
「大好きです……俺も」
届いていないはずの言葉が、理人さんの口元を緩ませる。
俺は小さく笑い、近づいてくる睡魔の気配を感じながら、ゆっくりと目蓋を下ろした。
fin
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