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番外編 MAG復活ライブ ユイ3
ナオさんがドラムスティックで「カン、カン、カン、カン」とカウントを取った後、いきなり爆音ギターがかき鳴らされる。その爆音なグルーヴに早くも体が持って行かれそうになる。
そんな中、ジュン様がゆっくりと頭を上げ、目を見開き歌い始める。
あぁ、ジュン様だ・・・動画で何百回と見たジュン様だ。
ファーストシングルになった曲から始まり、次々と曲が続いていく。
ジュン様の生ボーカルは、ヤバいなんてもんじゃなかった。
とてつもない色気と迫力がジュン様の全身から匂い立つ。本気で魅了の魔法を使っているかのようだ。
そしていつもより低い声でフロアに迫り来るように歌いあげ、シャウトする様は何というか、上手く言葉に出来ないけど、オーラがすごくてとにかく神々しい。
美と破壊を歌声で司る艶麗なる魔王。
がんばって中二病的に言うとそんな感じ??
いつの間にか俺も満員のフロアに突入。もみくちゃにされながら一番前まで辿り着き、かぶりつきでライブを堪能した。曲に合わせて飛び跳ねる。
フロアの前の真ん中辺りではモッシュが始まる。けど、それに参加しない人には当たらないよう、さり気なく注意しているようだった。俺も混ざりたかったけど、後で絶対にシグに怒られると思って自重した。
けど、ジュン様の歌声はもちろんの事こと、音もカッコよすぎて、大好きな曲が目の前で演奏される生のライブの迫力に感動しすぎて、もう、もう、踊ってないと頭が爆発しそうだよ!
爆音ギターの存在感は当然として、このうねるグルーヴはベースの音もちゃんと聞こえているからなんだろうな。カイさんのギターに全ての音が負けてしまいそうなのに、リズム隊やアキさんのギターの音もキチンと調和されていて素晴らしい。これがPAの力なんだろう。
流石レンさん!!
そして今は、フロアのお客さん一人一人もMAGのメンバーのような一体感がある。
今までMCもなくひたすら曲が続いていたのに、音が途切れた。ジュン様がマイクに向かって言う。
「待たせたな。」
フロアは大興奮!泣いてる人もいるよ。俺の目にも涙が滲む。
ragが始まる。フロアの盛り上がりも最高潮だ。みんな拳を振り上げて、
「rag rag rag」の大合唱!!
本当にこの空間が一つになった。人や音が入り混じっての一空間。まるでこのライブハウスが丸ごと一生命として生きているかのよう。これがMAGのライブなんだな。
この場に存在出来た事に感謝する。
その後、アンコールも含め、ライブが終了する。時間にしたら一時間も経ってないのに、俺は遠い世界に旅をして来たような気分だった。
放心状態の俺に、シグがコーラを手渡してくれる。
「素晴らしかったですね。」
「うん、うん・・何か言葉が出ないや。」
シグは、汗まみれの俺をギュッと抱きしめてくれた。
その後、レンさん、兄さん、冬崎先輩、カグヤ、シグ、俺、で、MAGの打ち上げに参加。俺とシグと冬崎先輩は未成年なので、居酒屋だけどジュースで乾杯。
今日のライブの素晴らしさを感謝を込めて語ったらMAGのメンバーに爆笑された。
「いや、ユイも面白れぇわ!!今時そんな格好をしてるくらいだから、気合い入ってるなぁ、とは思ってたけど予想以上だな。気に入ったよ。」
そう言ってナオさんに肩を抱かれる。
俺は嬉しいけど・・・シグの目が怖いっ!
「やめなよナオ。シグくんがすごい目で見てるよ?いいかげんにしないと僕も怒るけど?」
ひっ?!ヒロさんの目も怖いです!!
「まっ、ユイの可愛さはな~ちっさい分、レンを超えてるからな!愛でちまうのは仕方ねぇよ。」
カイさんも何言ってんの??!カグヤが、そこにカグヤがいるからっ!!
「あら、カイさん。あたしの弟を愛でるのなら、あたしを愛でてくれない?それともあたしがカイさんを愛でてあげましょうか?」
「おい、カグヤ。親の前で生々しい話はやめろ。お前はもっと慎みを持て。」
ジュン様がカグヤを止めてるっ?!
大爆笑するアキさん。
「あ、あの自由奔放の極みだったジュンが『慎み』だってっww!!!ウケる!カグヤちゃん最強だなっ!」
そんな感じで打ち上げでも楽しくすごし、CDに MAGのメンバー全員のサインをもらい、シグと俺、兄さんと冬崎先輩は一次会だけで帰って来た。
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