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Scene-1
「俺って印象薄いのかなー?」
俺は机に頬杖をついてむぅっと唇を歪めた。
「落ち込むなって藤原、沢井が変なだけだよ」
昼休みの教室、隣でパック牛乳をゴクゴク飲みながら友人の原田が俺の背中を叩いた。
「それから何ヶ月?今はもう名前ぐらいは覚えられてんじゃね…つか、俺も話したことねーわ」
今気付いたわと大口で笑う。
「そうそう沢井って担任の綾子先生以外と話してんの見たことないよ?」
目の前には二人の女子。同じ部活の仲間で、気が合うから四人でいつも昼飯を食っている。
「今どき詰襟きっかり上まで閉めて、黒縁メガネ、黒髪真面目くん」
「ダセェ!ありえねぇ!」
女子二人が顔を見合わせて笑う。
「藤原の方が全然可愛くていいよ」
そう付け足されて俺は「いやそういう問題では」と苦笑いして返した。
教室の入り口に近い廊下で沢井は、担任の数学教師、綾子先生を捕まえて教科書を見せながら何やら質問している。俺は目だけそちらに向けてパンをかじった。
(そうかな、ダサいかな?)
俺たちとは違う自分の色を持ってると思うんだけど。
なぜか分からないけど、俺は沢井の事をそう思っていた。
まあ確かに、成績優秀、品行方正、俺とは全然違うから、目に止まってなくても、名前覚えられてなくても仕方ないのかもしれないけど。
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