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Scene-2

 放課後、俺は提出用の数学のプリントの束を抱えて数学準備室に向かっていた。日直だったことをすっかり忘れてた。覚えてたらホームルームの時に綾子先生に渡せたのに! 「あっ!」  無造作に持って急ぎ足で歩いていた俺の手から紙の束が滑り落ちた。ああもう、ついてないなと思いながら俺は散らばった紙を拾い集める。  そこに人影。  何枚かのプリントを拾うと丁寧に揃えて俺に差し出した。 「あ、ワリ…」  顔を上げて言葉が止まる。  心臓が鳴った。 「沢井」  別のプリントを拾い上げながら沢井が俺の方へ顔を向けた。  例えば、眼鏡の奥の切れ長の目。 「数学の課題のやつか、綾子先生の所か?」  すっと伸びた背筋。 「手伝おうか、藤原」  少し掠れる低い声とか、 「藤原?」  俺の名前を覚えた、唇。 「あ、うん、平気!」  心臓はずっと大きな音を立てている。繰り返す鼓動が自分の耳に響いた。  何だろうこの感覚、この感情。 「サンキュな、沢井」  俺はじっと見てしまっていた沢井の顔から目を逸らして数学準備室の方へ走った。 (ダサいとか…)  ダサいとか全然思えなかった。  むしろ、  とても、綺麗。

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