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君のためなら…。

「は……っ、はぁ……っ、……ふぅ……渚、大丈夫か……?」 「俺は……大丈夫……だけど……」  ぺたんと地面に座り込む渚の体をそっと抱きしめる。  ――生きてる。……良かった。  渚が生きてさえいてくれれば、なんだっていい。  このままこの腕の中の存在を失うくらいなら、LPが0になったって構わない。  そこまで思うからこそ、自分のLPがなくなったことより、渚が生きていてくれたことに酷く安心した。 「荒玖っ、渚!」  リーアと待機していた冬季が慌てた様子で駆け寄ってきた。 「大丈夫かっ?」 「なんとか……大丈夫、です」 「俺もなんとか……。ただ……」  言い出しづらくて口籠ってしまう。  そんな俺の態度に冬季は不思議そうに首を傾げた。  状況的に仕方なかったとはいえ、怒られるかもしれない。  でも、さっき冬季は回復する手段があると言っていたので、迷った末に、俺は正直にLPを0になったことを告げることにした。 「その……LPを、使い切ってしまった……」 「え? 0になったってことか?」  申し訳なさで居心地が悪くなり、顔を俯かせて小さく頷く。  そんな俺とは対照的に冬季は複雑そうな、でもどこか困ったような表情で笑った。 「そっかぁ。でもまぁ、回復出来ないわけじゃないぞ。そうだよな、リル?」  その呼びかけに応えるように空中に黒い穴ができて、そこからリルが姿を現す。  一体どこにいたのかは聞いても仕方ない気がしたので聞かないことにした。 「そうだな。というよりさっきそれを説明しようとしてたんだけどな」 「リル、どうやったら回復できるんだ?」  俺の質問にリルはニヤリと口角を上げていたずらっぽく笑うと、 「セックスすれば回復できる」  そう自信満々に言い切ってみせた。 「……………………」  その場にとてつもなく重い沈黙が舞い降りる。  俺も、隣にいた渚すら、その言葉の意味が呑み込めずに瞬きを繰り返した。 (今、こいつは、なんて言った?)  聞いたことのある単語のはずなのに、まるで現実味がないその言葉に頭の中は疑問だらけで、俺は早々ソレについて考えることを放棄した。 「…………」 「おーい? 聞こえてるかぁ?」  リルが脳内思考ごと停止している俺に呑気そうな声をかけてきたことで、ようやく現実に戻ってくる。

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