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★君のぬくもりのあとに(渚Side) 3

「……っ、荒玖……っ、……っ、ンンっ……」  そのままその快感に身を委ねようとして、ここが自分の部屋ではないことにギリギリで気がついた。  僅かに残っていた理性を必死に手繰り寄せ、俺は咄嗟に掌で先を覆ってから欲望を吐き出す。 「……ッ、ぅ……ッ!」  目の前で火花が散り、体がビクン!と跳ねる。  覆った手の中に生温かい(もの)が放たれて無遠慮に掌を汚した。 「はぁっ……! ふ……っ、ん……、はぁ、はぁ……、う……」  俺は荒い呼吸を繰り返しながら強張っていた体から力を抜く。  気持ちよさと共に体にどっと疲れが押し寄せ、それと同時に罪悪感が込み上げてきあ。  自身のモノに視線を向けると、ドロリとした白濁の液が覆った手の間から零れ落ち指先を汚している光景が目に入って、更に俺の心を責め立ててくる。 「……っ、……洗ってこなきゃ……」  心の痛みから逃げるように、重い体を起こして洗面所に向かう。  蛇口を捻り一度水で流してから石鹸をつけて優しく手を擦った。 「なに、やってんだろ、俺……最悪だ……」  不意に、ポツリと漏れるつぶやき。  荒玖のことを考えながら自分でしてしまったことに、ただただ申し訳ない気持ちが溢れて涙が出てくる。  手にこびりついた罪悪感を洗い流すように、石鹸を水で流して蛇口を止めた。  部屋に戻ってもう一度荒玖に視線を向けると、まだ穏やかに寝息を立てている。 (布団かけてあげるつもりで近寄ったのに……)  俺は再度ベッドに近づいてから、今度こそ荒玖の体にそっと布団をかけてあげた。 「うぅ……ん、……ぎさ……」 「……?」  荒玖は少し身じろぎをしてその唇が何事かを呟く。  布団をかけたことで起こしてしまったのかと思ったが目を開ける様子はなく、ただの寝言のようだった。 「な……ぎさ…………き……」 「……え?」  名前を呼ばれてぴくっと体が微かに跳ねる。  寝言を聞き取ろうと俺は荒玖の口元に耳を近づけた。 「な……ぎさ……、……き……、すき……」 「……っ!」  俺は咄嗟に荒玖から離れると、フラフラしながら後退る。  壁に背中をぶつけたことで、その痛みにようやく止めていた息を吐き出した。 「は、ぁ……っ、……っ」  ぶつかった痛さよりも荒玖が呟いた言葉が、耳の奥で何度も何度も木霊して俺の心をかき乱していく。  ――なんなんだろうか、今日は。  この世界に来てから俺の気持ちはめちゃくちゃで。  自分の中にある荒玖への気持ちを見たくなくて目をそらし続けているのに。  見ないフリが、出来ない。  あぁ……この気持ちの名前はなんだろう。

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