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拭えない疑惑

「んで、住む場所についてだけど、ガイドセンターから異世界人用に用意している寮があるからそこに住むといい。家賃も格安にしてるし、中も必要なものは一式揃えてある。後、防音設備もあるから安心して過ごせると思う。場所はリルに聞いてくれ」  防音、のところは……生活方面のことだということにしよう。 「……とりあえず、いろいろありがとう。また気になることがあってリルが答えられないような事なら聞きに来る」  俺はそれだけを告げて席を立つと、隣に座っていた渚の手首を掴んだ。 「あ……っ、ちょっと、荒玖……っ」  とにかく今は、早くここを離れたかった。  むしゃくしゃして冬季に怒りをぶつけてしまいそうだったからだ。 「冬季さん、ありがとう! またちゃんとお礼言いに来るからっ! レオとハルさんもまた!」  丁寧にみんなに挨拶をする渚を引っ張って部屋から出ると、ガイドセンターのホールまで足早に向かう。  以前ナツがいた受付のところまで戻ったところで、ゆっくり歩くスピードを落として立ち止まった。  気持ちが幾分か落ち着いたことでやっと我に返り、掴んでいた渚の手首を離してから静かに謝罪の言葉を口にした。 「ごめん……」 「いい、けど……。あんな態度よくない。いつもの冷静な荒玖らしくない」  渚はどこか怒ったような泣きそうな声色で俺を叱る。  何も言い返せずに黙るしかなかった。  そんな空気の中、無遠慮に割り込んでくる声が耳に届く。 「ところで、俺はもう帰っていいのか?」  俺達についてきていたリルが腰に手を当てて、宙でふわふわと胡座をかきながら話しかけてきた。 「……いや、聞きたいことが山ほどある」 「そーかよ。でも、俺からも一つだけお願いしていいか?」  そう言うリルは少ししんどそうに息を吐き出した。

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