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第7話 無自覚と発覚
病院では魔力で体をスキャンするらしく、医師の手に自分の手を乗せた。
むずむずするような感覚が体を駆け抜けた。
これが魔力なのか。
「おめでたですね」
耳を疑った。
あり得ない、僕は男だし。
「男なのに」
「男性でも妊娠出来る体を持つ人がごく僅かですが存在します。
ご存じですよね?
貴方は、その中でもさらに希少な方なのです」
「ですが! 今まで何も! そんな事言われた事も無かった!」
「例えば大病をしたとか、既往症があるとか、もしくはかなりの精神的な衝撃を受けた、とか。
様々な要因で体が変化する可能性があると言われています。
それは全て魔力が」
「あ、」
そうだ、あの手紙。
「心当たりがあるのなら、強く子供を願い魔力で体が変化したようですね」
いや、だって、僕は、願っても魔力は無いから。
「先生、僕に魔力は無いです。
だから、きっと食あたりとか胃腸炎とかそんなんだと」
「いえ、トロワさん、何か勘違いをされてるのではないですか?
魔力検査を公的機関で受けてますか?」
自分で魔法を使おうとしても出来なかった、何にも出ないしどうにもならなかったから、今だって魔力が必要な道具は使えないのに。
「そ、れは、でも! 魔力が必要な道具さえ使えないんです」
医者はあー、と言う顔をしてそれは魔力停滞を起こしてるから、流してあげれば治ると言った。
「治る? あ、あの、僕にも魔力がある?」
「えぇ、しかもかなりの魔力量がね。
先ほどのストレスや既往症での変化は魔力ありきで起きる現象です。
ただし、普通の人の魔力量では無理なんです。
だから希少なんです。
帝国にも魔力で変化した方は過去に一人だけです。
この帝国を護り導いた原初の魔法使い、タロウ様だけです。
普通は最初から、妊娠出来る因子を持って生まれますから。
魔法医師になる者なら必ずこの講義を履修しますから、魔力変化と因子では全く違うのですぐにわかるんですよ。
今までこんな変化を感じた方はいませんし、診察したところ膨大な魔力が循環されずにいるのが分かりました」
僕の母が男性だっからその因子を持ってるとか。
いやその前に原初の魔法使いがタロウって! 絶対にそれって日本人じゃん!
「お母様が男性でも、遺伝では無いですからね。
もし遺伝なら、もっとたくさんの妊娠男性がいますよ」
確かにそうだ。
同性同士の結婚で子供がいない家庭なんてたくさんある。
「いい機会ですから、今治療してしまいましょう。
それから魔力測定を受けて、帝国の魔法管理部に登録しておかないといけません。
帝国では魔力量が多い方は登録義務が生じますから」
色んな情報が入り過ぎて、考え込んでる間に医者から手を取られて魔力停滞を治療されそのまま魔力検査になった。
「これだけの魔力停滞をしていたのに、体を変化させられたなんて、どれだけの魔力があるんですかね。
普通は停滞状態じゃ、生活するにも一苦労なはずです」
停滞を治療と言っても、漫画なんかで良くある循環させるとかそんな感じだった。
体を熱い塊がぐるっと回るのが多少苦しくて、体を硬くするとゆっくりと深呼吸をしてなるべく力を抜くように指示された。
「肩こりの酷いのみたいな、なんかそれが全身って感じで」
ツボを押されると痛気持ち良いって感覚の酷い版みたいな状態だった。
「かたこり?」
この世界で肩こりって感覚は無かったんだっけ。
「あ、いえ、何でもないです」
全身の血がしっかり流れて、体が温まったような感じになると治療が完了した。
「さぁ、このプレートに手を置いて」
「はい」
プレートは黒曜石の巨大な石板のようで、真っ黒なそれに手を置くと色が変化した。
「ほら、やっぱり」
「えっと、この色は?」
「黒から金に変わりましたね。
ふふ、歴代の魔法使いでもいませんよ。
原初の魔法使いタロウ様でも白だと記録されていますから」
魔力量の順番は下から、黒・黄色・緑・赤・白・金、だそうだ。
「え? 最大って事ですか?」
「いえ、測れないって事です。
あ、君、魔法管理部に連絡して」
計測道具を片付けようとした人に声を掛けると、魔法管理部に連絡をすると僅か数秒でゲートと言われる空間が出来で、そこから管理部の人達が現れた。
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