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第1話

 皆で、ある町にやってきて、あるお店の前を通りかかった時だった。 「あっ!」  多分、日本で言う所の八百屋さんみたいな店だと思う。  果物っぽいものや、野菜っぽいものが並んでる。知らない食べ物とかも、たくさんある中で、ものすごく、見慣れた感じの存在に、オレは駆け寄った。 「これって、名前、何ですか??」 「スイカだよ」  スイカーー!!  ちゃんとスイカっていう名前だった!  でもなんか、日本のよりは、かなりでっかいけど。オレ、これ、持てるかな?   まあでも、外見は、ちゃんとスイカの模様。スイカにしか、見えない。 「何、ソラ。好きなのか?」  オレの後から店にやってきた皆。ルカが、笑いながらそう言った。 「好きっ……ていうか、まあ普通に好きなんだけど……これ、オレのとこにも同じのがあって」 「へえ?」 「まあもっと小さいんだけどね」  持てなくて、下に置いてあるスイカを、しゃがんだまま、思わずすりすり撫でてしまう。  いやー、なんか、サイズは違うけど、同じものを見ると、嬉しくなってしまう。何だろ、ゲームデザインする人が、スイカだけは好きだったから、入れ込んだとか? 不思議。 「スイカあるなら、スイカ割りってある?」  皆を見上げながらそう言うと、「何それ?」と不思議顔。 「え゛え゛ー、スイカ割り無いの―? えー、絶対つまんない! 損してる!」  思わずそう言うとルカが笑い出した。 「何だよ、スイカ、割るのか? 割ってやろうか?」 「わー、やめて! ただ割るんじゃないんだよっっ色々手順があるんだから待って」  オレがスイカを背後に守りながらそう言うと、ルカがクッと笑い出した。 「分かったよ」  おかしそうに笑いながら、店のおじさんに「これ貰ってく」と言った。支払いを終えてから、ルカは笑いながら、オレの隣にしゃがみこんだ。 「んで? どーしたいンだよ? 言ってみな?」  ふ、と細められる瞳が、こんな時は、ものすごく優しい。  悔しいけど、ドキン、と胸が勝手に音を立てる。 「……海に、行きたい」 「――――……ん? 海?」 「砂浜があるとこ」  別に砂浜じゃなきゃいけない訳じゃないけど、どうせなら、ちゃんとしたやつやりたい。 「ちゃんと、言ってみな、ソラ。砂浜と、あと何が要る?」 「木の枝というか、木の棒っていうか……あと、目隠しになる布かな」 「それだけでいいのか?」  ルカは軽く周囲を見回しながら立ち上がると、ふ、と店の横にまとまっていた木の束を見つけた。 「なあ、あの棒、一本売ってもらえるか?」 「ああ、どうぞ。どれでも好きなの取ってもらっていいよ」  店のおじさんと話したルカが、オレを振り返る。 「ソラ、選べよ」 「うん」  オレは立ち上がって、ルカと一緒に、木の束から、スイカ割りに使えそうな棒を一本ゲット。 「布はあるから、これでいーのか?」 「うん!」 「リア、砂浜のある海に飛べるか?」 「うん、いーよ」  クスクス笑うリア。ゴウとキースも、何か、楽しそうに笑ってくれてる。  皆、オレがたまに言うこういうイベントごと。  ……楽しそうにしてくれるから、すごい好き。  優しいよなあ。  リアの周りに集まって、飛ぼうとした瞬間。 「スイカ忘れてるよー」  とおじさんの声がかかる。 「あ」  忘れてた。一番大事なもの。  呆れたように笑う皆と。  オレがすぐに取りに行こうと動きかけた瞬間。  ゴウに、腕を押さえられた。 「つーか、お前アレ、持てないだろ。待ってろよ」  めちゃくちゃおかしそうに笑いながらゴウが離れて行って、スイカをひょい、と抱えて来てくれる。 「すごいー、ゴウ、力持ちー」  思わず拍手してると、なんか、ちらっと、ルカに見られた気がする。  …………ん?  見上げると、じっと見つめられて、なんかつまらなそう。 「?? 何、ルカ?」  オレがルカを見上げて、のぞき込んでいると。  隣でリアが笑い出した。 「ルカは、ソラが他の誰かを褒めると、面白くないんでしょ」  クスクス笑ってリアが言うけど、そんな馬鹿な、とオレはルカを見上げて。  ……ルカのその表情で、え、ほんとにそうなの?と、ハテナだらけ。 「ああ、もう、見てんな。 早く、リア、飛べよ」  でっかい手で、顔を覆われて、そのまま、抱き寄せられる。 「あっ待って待って、ミウーーーー!!」  遠くにフヨフヨ浮いてるミウを呼び寄せて、抱き締めた。  リアが呪文を唱えて、いつものように白い光に包まれる。

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