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三十年の事件

「卯月さんたちに迷惑を掛ける訳にはいかないから必要最低限のものだけ持って行くことにしたんだ」 夕ごはんを食べたあと引っ越しの準備がはじまった。心春もはりきってお手伝いしている。 「ついさっきまで引っ付き虫くっつき虫だったのが嘘みたいだ」 「一太くんに感謝だね」 ママに内緒みたいで、何を言われたかまでは分からないけど、一太くんに魔法の言葉を掛けてもらった心春。駄々を捏ねることなくすんなりと車椅子から下りてくれた。 心春と円花の服だけで衣装ケースがあっという間にいっぱいになった。 「新しいお家に持っていくおもちゃとぬいぐるみは五個ずつにしよう。片付けが大変だから」 心春は大きく頷くとお気に入りのうさぎのぬいぐるみを取りにリビングに走っていった。 「必要最低限といいながら、何だかんだですごい量の荷物になりそうだ。参ったな」 彼が頭を掻きながら苦笑いを浮かべた。

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