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新しい生活

九階で下りるとヤスさんが部屋に案内してくれた。 「一太くんありがとう」 円花を抱っこしようとしたら、 「オムツはこうかんしてくるから、しきさんはまってて。休んでていいよ」 「あ、でも、そういう訳にはいかないから」 「だってね、まどかちゃん、てをはなさないから」 一太くんの言う通り、円花は一太くんの服をぎゅっと掴み、しがみついていた。 「むりむりはなしたらかわいそうだよ。しきさん、あとでつれてくるね」 一太くんが円花を上の階にある自宅へと連れていってくれた。 「一太くんのほうが僕よりしっかりしてる。妊娠も子育ても何もかもはじめてだから、戸惑うことばかりで、ふたりの世話だけで一日なんかあっという間に過ぎていくし」 「最初から出来る人間なんていない。四季と和真さんは血の繋がりがない子どもを二人も引き取って育てている。誰にも出来ることじゃない。十八歳といったら、青春を謳歌して、遊びたい盛りだろう。それはそれですごいことなんだぞ。だから悲観するな。それと四季、オヤジは子育てはみんなでするもの。うちの子、よその子関係なく愛情をたっぷり注ぎ、みんなで面倒みる。世話をする。そう常日頃言っている。だから、ここにいる間はオヤジや橘におもいっきり甘えていいからな。遠慮はなしだ。いいな」 「はい」 感極まり泣きそうになりながら何度も頷いた。

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