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新しい生活のはじまり
「ふたりがなかなか帰ってこないから心配になって未知さんの携帯に何回か電話を掛けたんだ。そしたらみんな仲良く遊んでいるから心配しなくても大丈夫だって言われて。抱っこして階段を登って下さいって和真さんやヤスさん以外の人にはどうしても頼めなくて。ついさっきまで一太くんたちに遊んでもらったんだ」
「そうだったんだ」
「うん」
熟睡している円花を起こさないように彼がそっと頭を撫でてくれた。
簡易的な台所は給湯室にあるし冷蔵庫もある。好きに使っていいからとヤスさんに場所を教えてもらった。
夕飯の買い出しに行こうとしたら柚原さんに呼び止められて。土地勘もないし、方向音痴なんだ。迷子になれたら困ると言われて、明日一番近い、といっても車で十分くらい掛かるみたいだけど、スーパーに連れていってもらえることになった。だから今日だけは橘さんが作ってくれたお弁当を食べることになった。
「いただきます」
和真さんが椅子に座るのを待ってみんなで手を合わせようとしたら、ピンポン、ピンポンと呼び鈴が何回も鳴った。
「誰だろう」
彼がすっと立ち上がりドアに向かった。
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