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亀裂
まるっきり別人のようになってしまった櫂さん。誰かが櫂さんに成り済ましている、という可能性はないだろうか?ふとそんなことが脳裏を過った。
「ヤスさん、例えばなんですが……」
「旦那がいつの間にか他人と入れ替わっているか。なるほどな。結は紬が産まれるまで悪阻が酷かったからな。普通は気付くもんだが、旦那のいびきがうるさくて寝室を別にしていたとか、結が櫂に話し掛けても疲れているんだ。あとにしてくれとか、ほんの些細なことで、ふたりがだいぶ前からすれ違っていたなら話しは別だ」
「考えたくもないけど、和真さんと櫂さんが血の繋がった兄弟だとしたら、結お姉さんとも血が繋がっているということですよね?櫂さんは結お姉さんが妹だと知った上で結婚したんですか?ごめんなさい。頭が混乱してしまって」
ブレーキ棒を引っ張り、車椅子から円花の隣に移動した。どうにかしてる。そんなのあり得ないもの。今はとにかく冷静にならなきゃ。
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