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亀裂

その頃菱沼金融ではーー。 「姉さんが悪い訳じゃないんだ。自分を責めないで欲しい」 泣きぐずる紬ちゃんをものの五分で寝かし付けた彼。卯月さんが急いで準備してくれたベビーベットにそっと寝かせた。 テーブルの上には調査報告書と書かれたA4サイズの封筒が置かれてあった。 結お姉さんは出世払いで卯月さんにお金を借り、探偵に櫂さんの浮気性調査を依頼した。 「菱沼組の組員さんは揃いも揃って若くてイケメン揃いでしょう?だからかな、本当に紬は自分の子どもなのかって櫂くん疑ってばっかりいた。しまいには親子鑑定をするとまで言い出したの。櫂くん、人が変わったみたいに怖かった。一晩寝て考えて、和真に迷惑を掛けるわけにもいかないから卯月さんに相談してみたの」 「卯月さんはなんて?」 「自分にやましいことがあるから、私が浮気をしたと勝手に決め付けて、私だけを悪者にしようとしているんじゃないかって。誰がどう見たって目は櫂そっくりだろうって、そう言ってくれた。それがどんなに心強かったか」 封筒の中を確認する彼。 「姉さん、櫂さんの浮気調査を依頼したんだよね?」 「うん、そうだけど。どうしたの和真?」 彼は愕然とし、しばし呆然としていた。

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