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亀裂
彼の胸元にぐりぐりと顔を擦り付けて、腕のなかにおさまった。温かくて心地いい。ここが一番安心できる場所。僕の定位置だ。
「頼むからあまり煽らないでくれ。収まりが効かなくなるから」
戸惑ったような声が頭上から聞こえてきた。
「ごめんなさい和真さん」
「なんで謝るの。私、気にしてないよ」
てっきり寝ていると思っていたから、結お姉さんの声が隣のベットから聞こえてきたから驚いた。
「和真、ちょっと移動して」
「なんで?」
「なんでって、妹と一緒に寝たいからに決まってるでしょう」
「は?定員オーバーだ。ただでさえ狭いんだから」
「失礼ね。私、そんなに太ってないわよ」
「太っているとか、痩せているとか関係……」
彼が言い終わらないうち結お姉さんが背中のほうから布団に潜り込んできた。
「四季くんを独り占めするなんて百年早いの。四季くんはみんなの四季くんだよ。和真だけの四季くんじゃないよ」
結お姉さんがお腹を気遣うようにしがみついてきた。
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