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亀裂
「良かった」
「何が良かったの?」
「いつも通りの結お姉さんに戻ってくれて良かったってそう思ったの。結お姉さんにはくらい顔は似合わないもの」
「そうだなよ。姉さんは一途で健気だし、一生懸命だし、天然入っているところが可愛いし、ちょっとずれているところも可愛いし、ずっと笑っていて欲しい」
「和真、姉を口説いてどうすんの?四季くんに焼きもち妬かれても知らないからね」
「そんなことで四季はいちいち焼きもちを妬かないよ。だって、四季は俺しか見ていないから」
「ずいぶんとまぁ自信たっぷりに言うのね」
「だって新婚だから」
おでこの髪を指先で左右に分けると、チュッと軽くキスをされた。
「か、か、和真さん」
まさか結お姉さんの前でキスをされるとは思わなかったから。顔から火が出るくらい恥ずかしくて下を向いた。
「はい、はい。そうだったわね。ご馳走さま。イチャつけるの今だけだもんね。ねぇ和真、四季くんが可愛いのは分かるけど、泣き顔も悶絶するくらい可愛いのは分かるよ。でもね、がっついたり、グイグイと攻めまくって、四季くんをあまり泣かせないでよ。いじめないでよ」
「俺がいつ四季を泣かせたんだ?いじめてないだろう。妻を気持ちよくさせるのが夫のつとめ。それの何が悪い。それに四季の体はどこもかしこも砂糖菓子のように甘い……あっ、しまった」
失言に気付いたのか、はっとして片手で口元をおさえた。
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