｢シェドは焦ってんのよ。後継ぎを作んなきゃ王国は崩壊するでしょう。シェドは女相手に勃たない。そりゃあそうよね。夢華と妊婦を生きたまま焼き殺したんだもの。祟られて当然といえば当然でしょう。シェドの代わりに、シェドの妻たちを妊娠させるため若くてイケメンで健康的な代理父候補の男たちを集めるのがアタシの仕事。彼が櫂を見付けてきて、あとはいちいち言わなくても分かるでしょう。今ごろ、本部で妻たちに可愛がられているんじゃない？ドラッグ三昧、贅沢三昧、セックス三昧。あらやだ、三拍子そろった。アタシだったら日本になんて……朝から晩までゲロを吐いているような辛気臭い女のところになんて帰りたくないわよ」 ｢梨里花さんよ、おめさんも妊娠したら分かる。新しい命を宿すってことがどれだけ大変かってな」 ｢だからなんなのよ」 他人事のようにゲラゲラと笑いだした梨里花さん。 ｢言うだけ無駄だ」 城さんが渡辺さんの肩に手を置いた。 梨里花さんは任意同行に渋々ながら同意しし、K警察署で事情を聞かれた。あとにも先にも梨里花さんが事情聴取に応じたのはこれ一度きりだった。 櫂さんをはじめとする教団本部に連れ去れた日本人を救出するため捜査員が中国に向かった。それとは別に卯月さんが地竜さんという中国人に櫂さんを救出して欲しいと頼んでくれた。