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亀裂

早いもので十月も末。窓越しに見上げると、厚く濃い灰色の雲が空一面を覆っていた。 「パパ、じぃじなんて?」 「ごみの集積所でまた不審火があったから、戸締まりと火だけは気を付けるようにって」 「だってママ。わかった?」 「うん、分かったよ」 心春はこれから一太くんたちと度会さんの家に出掛ける。菱沼組の恒例行事。ハロウィンのパーティ&肝試し大会があるみたい。彼が心春の着替えを手伝ってくれた。 「ママ、こはるちゃんかぁいい?」 真っ白い羽がついたふりふりの天使のドレスは遥香ちゃんからのお譲りだ。 「うん、可愛いよ。サイズもぴったりだね」 得意気な顔でくるりと一回転して見せてくれた。 「ほら、姉さんも出掛けるよ。ずっと家に籠りきりなんだ。たまには太陽の光を浴びないとそれこそ病気になる。紬も準備万端だ」 布団をかばっと捲った。 「ちょっと和真、私一言も行くって言ってないから」 結姉さんが布団を奪い返そうとしたけど力の差は歴然としていた。 僕と円花はお留守番。 知恵熱かな?お腹が緩くて下痢ぎみで、これから上澤先生が来てくれることになっている。橘さん曰く、上澤先生は卯月家と菱沼組のかかりつけのお医者さん。診療所に電話を掛けたらたまたま往診中で近くの患者さんの家にいるということで帰りに寄ってもらうことになった。

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