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亀裂
「ヤスさん、四季と円花を宜しくお願いします」
「おぅ、任せておけ。結、紬の面倒は大姐さんに任せてたまにはゆっくり休め。畳の上で大の字で寝るのもなかなか気持ちがいいぞ」
「ヤスさんそれじゃあ全然変わりませんよ」
「お、そうだったな。すまんな」
ヤスさんが笑いながら頭を掻いた。
「心春、ママとおじちゃんの土産はいいからな。うんと楽しんでこい」
「うん」
ぶんぶんと大きく両手を振ると、彼と仲良く手を繋ぎ、スキップしながらるんるん気分で出掛けていった。
三人を見送ったあと、入れ違いに上澤先生が往診に来てくれた。お爺ちゃんとさほど年は変わらない。ガチガチに緊張していたら、
「そだに緊張しっさんな。儂まで緊張すっぺした」
困ったように苦笑いをされてしまった。
気のせいかも知れないけど、やさしげなその眼差しが南先生にとてもよく似ていた。
「あの、ヤスさん……」
服をつんつんと引っ張った。
「どうした四季?あ、分かったぞ。いかにも胡散臭いヤブ医者に見えるってだろう?」
「違います」
慌てて顔を横に振った。
「上澤先生が南先生によく似てるから、だからその……」
「似てて当たり前だ。二人は親子だ」
「え?そうなんですか?」
ヤスさんの言葉に腰を抜かすくらい驚いたのはいうまでもない。
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