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橘さんの妹の千里さん

モニター越しに見る櫂さんはなんら変わってはいなかった。顔のない男がいかに櫂さんそっくりに化けていたか改めて驚かされた。 警察による事情聴取には素直に応じているものの、結お姉さんや僕たち家族のことになるとなぜか貝のように固く口を閉ざしてしまうみたいだった。 今日もだんまりを決め込んだのか一切なにも話そうとはしない櫂さん。その櫂さんの脇から女性が顔を出した。 ーもしかして結の隣にいる子が噂の四季くん?いやぁ~~もう、かぁいい~~ ー 甲高い声が聞こえきた。隣にもう一人いるのかな?女性がバシバシと肩か背中を叩いているようだった。 ー千里痛い。叩くな。まずは落ち着けー 宥めるような男性の声が聞こえてきた。 ーはじめまして四季くん。橘の妹の千里よ。卯月はむっつりスケベだから、セクハラされように用心するのよ。それと、菱沼組の男たちは変人揃いだし、変態ばっかいるから気を付けるのよ。櫂が喋らないからアタシのほうから説明するわね。警察は二十数前に起きたある二つの事件の重要参考人として櫂から事情を聞いてるのー ーせ、千里さんー 櫂さんが急にソワソワして慌て出した。

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