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結お姉さんの涙
「信仰する宗教も自由ですし、結婚も自由です。自分たちが決めた人生です。他人は口を挟めません。結さん、預かっていたこれどうしますか?」
橘さんが黒い鞄から取り出したのは離婚届だった。
「破り捨てるのもよし、これを私の妹に渡し、櫂さんに突き付けるもよし、決めるのは結さんあなた自身です」
結お姉さんはベビーベットのなかですやすやと眠る紬ちゃんの寝顔をしばらくの間見つめていた。
「……私はただ……本当のことが……知りたいだけ」
結お姉さんの目から涙が零れた。
「実の兄と妹だと知らず結婚して、十二年ずっと一緒にいて、やっと紬を授かることが出来た。櫂くんが実の兄でも好きな気持ちは変わらない。櫂くんの本当の気持ちが知りたい。私と紬が嫌いなら離婚するしかないけど、もし気持ちが少しでも残っているなら、やり直したい」
鼻を啜りながら涙を手で拭った。
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