｢中国では外国人の宗教活動は厳しく制限されています。強制送還を拒み続けていると、勾留される恐れがあります。地竜さんの話しでは教団の本部近くには政府機関があるそうです。当局にスパイ行為をしたと判断されれば十年以上の有期懲役か無期懲役になります。ですからすみやに強制送還の手続きをとったみたいです。明日の昼には捜査員とともに帰国します。櫂さんの迎えは私の妹夫婦が行きますから心配しないでくださいね」 ｢何から何までありがとう橘さん」 結お姉さんが頭を下げた。 ｢櫂くんと一緒に連れていかれた他の男性たちは？もちろん一緒ですよね？私や紬みたく帰りを待っている家族がいるんですもの」 ｢それがですね………」 橘さんが困ったような表情を浮かべた。 ｢前にニュースで聞いたことがあります。中国の法律は薬物犯罪に厳しいって。実際に死刑になった日本人もいるって」 ｢逮捕されればそうなる可能性も十分にあります。連れ去られた男性たちは櫂さんと同じように帰国を拒み、シェドの妻たち……といっても事実婚、内縁関係ですが結婚してこのまま教団に残りたい。そう言ってます。妻たちの中には妊娠している者もいるみたいです。宗教や犯罪とは全く無縁のごく普通の生活を送っていた男性たちをわずか2ヶ月あまりでここまで変えてしまうなんてーーこれが教団の真の怖さというものなんでしょうね」 ｢そんな………」 結お姉さんは絶句し、声を震わせた。