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真山さんの新たな門出

「どうせ俺なんて……別にいいですよ」 言うタイミングを逃した蜂谷さん。すっかり臍を曲げてしまった。 「蜂谷さんもありがとう。みんな側にいてくれるからすごく嬉しいです」 「やっぱり四季は姐さんに似てる」 蜂谷さんが優しく微笑んでくれた。機嫌が直って良かった。 「じゃあな」 真山さんが寝ている聡太くんを起こさないようにそっと静かに抱き上げた。 「なんだもう行くのか?」 「聡太が寝ているうちに移動することにしたんだ。色々と世話になった。達者でな」 「真山、いつでも帰って来ていいんだぞ」 蜂谷さんが声を掛けると、真山さんは目元を潤ませた。 「まさかハチにまで卯月の兄貴と同じことを言われるとは思わなかったから驚いただけだ。言っておくが泣いてねぇぞ」 くるっと背中を向けると、手の甲でそっと涙を拭った。 「たく、相変わらず素直じゃねぇな」 「う、五月蝿い」 ヤスさんに言われ、ますます顔を赤くするとそそくさと足早に出掛けていった。

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