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発端
「M小は県内でも珍しいエレベーターがある全校生が300人にも満たない小学校だ。少子化の影響で年々児童が減っていて、支援が必要な児童や、車椅子の児童を学区を問わず積極的に受け入れている。対するK小学校は全校生が60人にも満たない小規模小で阿武隈川の近くに学校があるから、過去十年で三回浸水被害に遭っている」
「さすが蜂谷さん。詳しいですね」
「俺は県外から二本松市の岳温泉に引っ越してきたからさっぱり分からん。弓削が送ってくれたメールを読んだだけだ」
にやりと笑いスマホを掲げた。
「ちょっと見ただけでメールの内容をすべて記憶出来るなんてすごいです」
「そうか?褒めても何も出ないぞ」
照れ笑いしながらも、嬉しそうに顔を綻ばせた。
「四季、弓削が折り入って話しがあるそうだ。明日、心春が保育所に行ったあとでいいから組事務所に来れるかって。円花も連れてきていいって。どうする?」
「急にどうするって聞かれても……」
彼の顔をちらっと見た。
「俺が駄目って言うと思った?行ってきてもいいよ。弓削さんは未知さんラブだし、未知さんしか眼中にないから、心配しなくても弓削さんには焼きもちは妬かないよ」
困ったように苦笑いされてしまった。
「円花のオムツと着替え、持っていかないとね。四季は寝てていいよ」
彼がむくっと起き上がった。
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