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二つの顔を持つ殺し屋

彼がいない間、何度も電話がかかってきた。ワンコールでぶちっと切れては、数秒後にまたかかってくる。 隣で寝ていた青空さんがむくっと起きてきてスマホを掴むと耳にあてた。 「言いたいことがあるならはっきり言えばいいだろう?黙っていないで答えろ!それともあれか?つんぽとかか?もしもし。もしもし~~聞こえてますか?」 ーやかましい。聞こえてるー 「なんだ。喋れるんじゃないか」 聞き覚えのある声だった。 「俺らの千ちゃんを敵に回すことになるぞ。いまのうちだ。諦めろ。手を引け」 ーは?誰だソイツ。喧嘩を売ってるのかー 声色が変わった。 「なんだこころやすらぎのナンバー2か3は千ちゃんのことも知らないのか?てっきり知っていると思ったぞ。なら、教えてやる。千ちゃんとはな昇龍会の会長、卯月千里のことだ」 電話越しでも、男が息をゴクリと飲んだのがはっきりと分かった。 「瀧田、悪いことは言わない。自首しろ」 蜂谷さんも起きてきた。 ー五月蝿い。黙れ!それに、俺はー 「海堂より偉いってだろう」 男性は何も答えずぶちっと電話を切った。 「蜂谷さん、青空さん何かあったんですか?」 彼が慌てて戻ってきた。 「迷惑電話が何回もかかってきたから、一言もの申した。安眠妨害も甚だしい」 「これでようやく安心して寝れる」 蜂谷さんと青空さんは何事もなかったように自分のベットへと戻っていった。

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