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チカちゃんとの出会い
「コオお兄ちゃん、昴さんは?」
片手でハンドリムをこぎ駆け寄った。
「一睡もしていなかったんだろう。寝てる。四季を連れ出さなければ、家族を皆殺しにする。そう脅されたらしい」
「そんな………」
「昴は教団の恐さを知っている。だから抵抗せず男たちの言うことを黙って聞いた。卯月さんと弓削さんにまた借りが出来てしまった」
「オヤジと弓削のお節介やきは今にはじまったことじゃない。気にするな」
鞠家さんの声が奥から聞こえてきた。
「昴の側にいてやれ。親と同居してくれる嫁さんなんて今どきめったにいない。昴を大事にしてやれ。渡辺も鬼じゃない。昴が落ち着くまで事情聴取を待ってくれると言ってんだ。焦らず急がずだ」
「鞠家さんありがとうございます」
コオお兄ちゃんが頭を下げた。
「ヤスさんにちょっとだけ嫉妬した」
コオお兄ちゃん口から予想もしていなかったことを言われてドキッとした。
「だって四季のことをすごく可愛がっているだろう?だから四季を取られるんじゃないか、気が気じゃなかった。ヤスさんは今まで通り。なにも変わらない。口喧しい心配性の兄がひとり増えるだけだ。そう言ってくれた。ヤスさんにはやっぱり敵わないな」
コオお兄ちゃんが自嘲した。
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