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宋さんの友だち

「慶悟、そっから動くな!和真と彼氏を守れ!二人に傷一つ付けたらただじゃおかねぇぞ!」 卯月さんの声はよく通る。 「若井、お前が保育園から連れ出したその子どもは心春じゃないぞ」 「は?」 「預けるつもりで和真が保育園に連れていったのは確かだが、隙を見て橘が連れて帰った」 「嘘だろう」 「嘘ついてどうするんだ」 卯月さんが着ていたジャンバーをすっぽりと頭に被せてくれた。 「心春も円花も無事だから心配するな。ハチ、殺し屋が潜んでいる。四季の盾にな 青空さんが裏山をじろりと睨み付けた。 「袋の鼠とはまさにこの事か」 「袋の鼠になったのは俺たちじゃない。若井のほうだ。ヤツは知りすぎた。消されて当然だ。なるべく頭を低くして、凛に怖くないって声を掛けてやれ。凛だって不安な気持ちでいっぱいなはずだ」 「はい」 卯月さんに言われたように頭を低くすると、パンパンと乾いた音が二発聞こえてきて、上のほうから悲鳴が上がった。 「大丈夫だ。こっちには柚原がいる」 黒ずくめの男が土手を転げ落ちてきた。怪我をしているのか、背を丸め、足を押さえながら呻き声をあげていた。

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