212 / 431
宋さんの友だち
卯月さんが子ども好きというのが男の子に伝わったのか、ぴたりと泣き止むと自分から両手を広げて抱っこをねだった。
「顔はあの通り怖いんだが、不思議なもので子どものほうからオヤジに近寄ってくる」
「げっぷも、あやしかたも上手で、どんなにぎゃん泣きしてても、駄々をこねていても、卯月さんがあやすとすぐに泣き止むって聞いていたけど本当だったんですね」
「元保育士だからな、うちのオヤジは。カミさんにも子どもにモテモテだ」
「へぇ~~初耳だな」
城さんが驚いたような声をあげた。
「知らなかったんですか?」
「あぁ。全然知らなかったからびっくりしている。卯月が保育士だったとは………だからか、うちの子、よその子関係なく卯月のまわりにはいつも子どもがいるのか。なるほどな」
一人で納得すると、手錠をかけられた若井さんのもとにゆっくりと歩み寄っていった。
「若井、未成年者略取罪および未成年者誘拐罪現行犯で逮捕する」
取り押さえられてもなおも抵抗し、暴れる若井さん。でも城さんに手錠を嵌められると観念したのか大人しくなった。
「だいくん。にしゃい」
男の子は得意気に指を二本立てて見せてくれた。
「だいくんか。心春と仲良くしてくれてありがとうな。腹は減ってないか?今、パパが迎えに来ているからもうちょっとの辛抱だぞ」
男の子は卯月さんの服をぎゅっと握り締め、連行されていく若井さんをじっと見つめていた。
ともだちにシェアしよう!