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消えた乗客の正体
消えた乗客は偽名を使っていた。住所もでたらめだった。でも悪いことは出来ない。天知る地知る我知る人知る。まさにその言葉通りだ。昇龍会と直参の組が総力を結集し、地道な聞き込み調査の結果消えた乗客にたどり着いたのは週刊誌が発売されてからちょうど二十日後のことだった。
「甲崎と国井が逮捕状を持って別室で待機している。絶対に悟られるなよ」
「分かってる」
パソコンのモニターに映し出されたのは、宇賀神組の組長宅の広間だった。
応対してくれたのは渋川さん。
恰幅のいい組長の宇賀神さんは目を閉じて胡座をかいて座っていた。
宇賀神さんの前には座椅子が置かれてあった。まだ空席だ。ここに座る人物こそが、消えた乗客だ。
その人物は約1000万円の借金を帳消しにする代わりに、僕たち家族の誘拐と殺害を引き受けた。
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