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産まれてきてくれてありがとう

「痛くて死にそうになった。堕ろすことも出来たのに、こんな大変な思いをして母さんは僕を産んでくれた。血が繋がっていない僕を父さんは自分の息子として迎えてくれた。和真さん、僕はひとりでこの世に産まれてきた訳じゃない。それを凛が教えてくれたんだと思うんだ」 ベビーベットですやすやと眠る凛の寝顔を見つめた。 夜中に破水し、それから半日以上かかったけど無事に産まれてくれた。 2789グラムの女の子。寝ずの番で交代で警護をしてくれたヤスお兄ちゃんと弓削さん。そして蜂谷さんと青空さん。ぴりぴりとした重苦しい空気が流れていたけど、凛の元気な産声が一瞬で吹き飛ばしてくれた。 約束通り青空さんが一番はじめに凛を抱っこしてくれた。みんな赤ちゃんをだっこするのに慣れてて、凛は一回も起きなかった。オムツ交換もヤスお兄ちゃんと弓削さんと蜂谷さんが率先してやってくれて。はじめてのことにあたふたする僕と彼をサポートしてくれるから心強い。

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