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ディノンさん
十五時を過ぎて緑色のエプロン姿でヤスお兄ちゃんが来てくれた。
「おやつタイムだろ?食べれるときに食べないと。凛は俺が抱っこしているからゆっくり食べたらいい」
「なんで分かったの?」
「なんでかな?冷めた紅茶を一気に飲むより、熱い紅茶をふぅふぅしながら少しずつ飲んだほうが絶対に旨いだろ?」
ヤスお兄ちゃんが愉しそうに笑った。
「ヤスさん、あとは頼んでも大丈夫ですか?」
「橘、ありがとうな。世話になった」
「いいえ、私は何もしてませんよ。夜になったら柚原さんが来ますから」
「オヤジ夫婦と橘夫婦の全面協力。本当にありがたい」
「子どもはみんなの宝物ですからね」
「橘さんありがとうございます」
ぺこりと頭を下げた。
橘さんが帰っていき、ヤスお兄ちゃんと二人になった。
「橘さんや卯月さんから聞いたと思うけど………」
「橋本のことだろ?」
「うん。会いたい気持ちはあるのに、会うのが怖くて……」
「岩水も同じことを言ってたな。真山は助けてと嘘泣きして命乞いをするつもりだろう。そう問屋はおろさない。何を今さらと、呆れていた」
ヤスお兄ちゃんがやれやれとため息をついた。
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