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05 ヒットメーカー(1)
ダイチが事務所に入って数日が経った。
プロダクション内では、ヒビキが認めた待望の新人、ということで大いに期待が集まった。
ソラの再来か。
そんな声まで出始め、ちょっとしたお祭りムードが出来上がっていた。
しかし、それに水を差す事が起こり始める。
ダイチの容姿はアイドルとして文句なし。
可愛い系男子路線で進め、少しやんちゃな性格もプラスに作用するだろう。
しかし、歌の方は? と懸念視する声が出始めていた。
ヒビキは、それを知ってか知らずか、毎日のようにボイトレ担当と面談する。
「まだ、何か変化はないか?」
ボイトレ担当は首を振った。
メガネのピントを合わせながら、検査結果のデータを見つめる。
「ヒビキさん、本当にソラ以来の逸材ですか? お世辞にも良い声とは言えないですねぇ……」
「そうか……いいんだ今は。ポテンシャルは間違いなくある。俺が手塩をかけてしっかり伸ばしていく……」
「そうですか……ヒビキさんがそこまでいうのなら。まぁ、気長に成長を待ちましょう」
「そうしてくれると助かる。これに限っては、すぐにとはいかない。時間がかかるものだからな……」
自席に戻ったヒビキは、自分自身に、焦ることはない、と言い聞かせた。
「あのソラだってダイチと同じ様だったじゃないか?」
そう呟き、ヒビキは冷静になった。
「そうだったな……ソラも最初は只の歌が好きな少年だったっけ……」
『ぼ、僕、ソラって言います! よ、よろしくお願いします!』
一瞬、ソラが恥ずかしそうに挨拶する姿が脳裏に浮かぶ。
そして、すぐに首を横にブンブンと振った。
「いや……ダイチは、ソラとは違う……別にソラの代わりってわけじゃねぇんだ……」
ヒビキは、すくっと立ち上がり、ジャケットを羽織った。
「トキオ、俺は外へ出てくるぞ!」
「はい! 了解です、ヒビキさん。ダイチのところっすよね? いってらっしゃい!」
****
「俺だ、ヒビキだ」
「はい、只今開けます」
インターホンにヒビキの顔が映り、ダイチは玄関のロックを解錠した。
ここは事務所にあてがわれたダイチのマンション。
そのマンションにヒビキは訪れた。
「ヒビキさん、お茶飲みますか?……」
「……そんな事より、早速トレーニングだ……」
ヒビキは、台所に立つダイチを後ろからガバッと抱きついた。
驚くダイチをよそに、手を胸元にスッと忍び込ませ、ダイチの乳首をまさぐり始める。
「……はぁ、はぁ……ヒビキさん……や、やめて下さいっ……俺、乳首めちゃくちゃ感じるようになっちゃって……んっ、んんーっ」
ダイチの抵抗むなしく、その言葉はヒビキの唇で塞がれてしまった。
それはいつもの光景だった。
ベッドの上で裸の二人。
ヒビキは手を伸ばし優しくダイチの頬に触れる。
「まだ、緊張しているのか? ダイチ」
「……少し……でも大丈夫です」
「そうか……じゃあ念入りにほぐしてやろう。さぁ、おいで……」
「はい」
ダイチは素直にヒビキの胸の中に入る。
すると、すぐにヒビキの口を使った愛撫が始まる。
唇、耳、首筋。
南下して、肩から脇を通り乳首へ。
ねっとりとしたキス。そして、ぴちゃ、ぴちゃとエッチな音を立てて舌が這っていく。
「あっ……ああん……ヒビキさん……俺、とろけそうです」
緊張していた体がほぐされ、さらにトロトロになるまで溶けていく。
全身が火照り、自然と男のモノを欲して体が開いていく。
ダイチは下腹部に溜まった性欲の塊を持て余し、足をモジモジさせた。
「ふふ、ダイチ、すごく感じているのが分かるよ……ここはもう限界かな?」
ヒビキは逆手でダイチのアナルに指を差し込んだ。
するとダイチは敏感に反応して歓喜の悲鳴をあげる。
「……あーっ! お、お尻の穴……そんな風に指でいじられたら俺……感じすぎておかしくなっちゃう……ううう……感じるっ……気持ちいいっ……気持ちいいよ……」
「そうか、可愛いよ、ダイチ」
「……ヒビキさん……俺、もう我慢出来ないっ……ヒビキさんのチンコ挿れて下さい。俺のケツマンコに……お願いします!」
「もうおねだりか? 男のモノをこんなにすぐに欲しがるとは……どうしようもなくエッチな男になったな、ダイチ」
「そ、そんな言い方って……だって、俺……」
「ん? 違うのか」
ヒビキは、意地悪そうな顔で指の出し入れを早くする。
「くううっ、やばいっ……ひ、ヒビキさん! 俺、ヒビキさんが言う通り、どうしようもなくエッチな男です……だから、早く、早く……」
ダイチは、M字開脚で腰を浮かし、ヒクヒクするアナルをヒビキに向けた。
「ふっ、しょうがない男だ。挿れてやるか……」
「……やった! ヒビキさんの勃起チンコきたっ……うっ……入ってくるっ……ケツマンコの奥までくるっ……うっ、かはっ……いいっ!……いいっ!」
ダイチは、ふと、姿見の鏡に、男に襲われてよがる男の姿が映った。
あんなに嫌だったのに……俺、こんなになっちゃった……。
確かに、初めてのセックストレーニングの時は違っていた。
ダイチは、開口一番ヒビキに言った。
「ヒビキさん、俺、あんたとしてもイク気ないんで」
当初ダイチはそんな風に突っぱねていた。
しかし、ヒビキの愛撫は多彩で甘美。
長く細い指が体中を触手のように這い回り、耳たぶは涎まみれで甘噛みされ、乳首はピンっと勃起するまで吸われ続けた。
今まで味わった事のないその快感は、ダイチの体をいやらしい体へと変貌させた。
自然と腰をくねらせ、喘ぎ声を上げ悦楽によがる。そして、男の肉棒を求めて下腹部を熱くする体。
「……俺は違う! 違うんだ!……どうして俺はこんな体になってしまったんだ」
混乱するダイチにヒビキは言った。
「ダイチ、お前はもともとそういう男だ」
「何を! 俺がビッチだとでも言うのかよ!」
「ふふ、勘違いするな。それは、スターになる為に必要な資質というものだ」
「スターだと!?」
ヒビキの説明は、性感帯を広く開発しその感度を高めていくことで、歌の表現力を豊かにし人を惹きつける歌声を作り出す、というものだった。
「……それがセックストレーニングってことなのか?」
ヒビキはうなづいた。
「だから、お前はどんどん感じる体になればいい。遠慮なく男を求め男で達しろ。それこそがお前の目指すところなのだから。数をこなせば自分でも成長を実感する事が出来るだろう」
「……成長?」
ダイチはふと気がついた事があった。
ヒビキにイカされる時に一瞬頭によぎるイメージ。
どこか大きい舞台。
そこで、誰かが、大観衆を前に気持ちよく曲を演奏している。
そんなイメージ。
それが何なのかよく分からないのだが、回数を重ねる度に鮮明になって行く。
それをヒビキに問いかけた。
「……やはりお前は、セックスシンフォニックの影響を受けやすいようだな……俺の目に狂いは無かった」
「セックスシンフォニック?」
「ふふふ、俺の音楽に対するイメージだ。気にするな」
それ以上、ヒビキは何も言わなかった。
ダイチの中で、セックストレーニングによって、本当に何か得ることができるのかもしれない、という腹に落ちるものがあった。
それからというもの、ダイチはヒビキの調教を素直に受け入れるようになったのだ。
「いいっ、いいっ……奥まで来てるっ……ヒビキさん、もっと、もっと!」
ヒビキの肉棒がアナルを出入りする度に、込み上げる快感。
力が抜け、顎が上がり、自然と漏れ出る喘ぎ声。
耳には、低い声で囁かれる甘くてゾクゾクする言葉。
頭の中が空っぽになり、ただペニスの事しか考えられない。
「俺、いっちゃう、いっちゃう……あーっ!!」
ダイチは、絶頂の断末魔と共に快楽の沼底へと沈んで行った。
****
ヒビキは、ジャケットの袖に腕を通した。
「じゃあ、俺は社に戻る。明日は朝からスタジオでレッスンだ。いいな……」
「……はい、ヒビキさん」
ダイチは、一人になるとやるせない気持ちになった。
男に犯される事にすっかり慣れた自分。
何の躊躇もなく、アナルを差し出す。
ちょっと前迄は、こんな事になろうとは少しも思わなかった。
ふとカイトに貰ったギターを見つめる。
じわっと溢れる涙が目を覆う。
「カイト、俺、このままだと、お前とのセックス忘れちゃうよ……」
ギターに縋り付く。
「でも、お前がいけない! お前が俺を捨てたから……だからいいんだ! これで! うっ、ううう」
ダイチは、カイトの事を想い、いつまでも啜り泣いた。
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