5 / 26

05 ヒットメーカー(1)

ダイチが事務所に入って数日が経った。 プロダクション内では、ヒビキが認めた待望の新人、ということで大いに期待が集まった。 ソラの再来か。 そんな声まで出始め、ちょっとしたお祭りムードが出来上がっていた。 しかし、それに水を差す事が起こり始める。 ダイチの容姿はアイドルとして文句なし。 可愛い系男子路線で進め、少しやんちゃな性格もプラスに作用するだろう。 しかし、歌の方は? と懸念視する声が出始めていた。 ヒビキは、それを知ってか知らずか、毎日のようにボイトレ担当と面談する。 「まだ、何か変化はないか?」 ボイトレ担当は首を振った。 メガネのピントを合わせながら、検査結果のデータを見つめる。 「ヒビキさん、本当にソラ以来の逸材ですか? お世辞にも良い声とは言えないですねぇ……」 「そうか……いいんだ今は。ポテンシャルは間違いなくある。俺が手塩をかけてしっかり伸ばしていく……」 「そうですか……ヒビキさんがそこまでいうのなら。まぁ、気長に成長を待ちましょう」 「そうしてくれると助かる。これに限っては、すぐにとはいかない。時間がかかるものだからな……」 自席に戻ったヒビキは、自分自身に、焦ることはない、と言い聞かせた。 「あのソラだってダイチと同じ様だったじゃないか?」 そう呟き、ヒビキは冷静になった。 「そうだったな……ソラも最初は只の歌が好きな少年だったっけ……」 『ぼ、僕、ソラって言います! よ、よろしくお願いします!』 一瞬、ソラが恥ずかしそうに挨拶する姿が脳裏に浮かぶ。 そして、すぐに首を横にブンブンと振った。 「いや……ダイチは、ソラとは違う……別にソラの代わりってわけじゃねぇんだ……」 ヒビキは、すくっと立ち上がり、ジャケットを羽織った。 「トキオ、俺は外へ出てくるぞ!」 「はい! 了解です、ヒビキさん。ダイチのところっすよね? いってらっしゃい!」 **** 「俺だ、ヒビキだ」 「はい、只今開けます」 インターホンにヒビキの顔が映り、ダイチは玄関のロックを解錠した。 ここは事務所にあてがわれたダイチのマンション。 そのマンションにヒビキは訪れた。 「ヒビキさん、お茶飲みますか?……」 「……そんな事より、早速トレーニングだ……」 ヒビキは、台所に立つダイチを後ろからガバッと抱きついた。 驚くダイチをよそに、手を胸元にスッと忍び込ませ、ダイチの乳首をまさぐり始める。 「……はぁ、はぁ……ヒビキさん……や、やめて下さいっ……俺、乳首めちゃくちゃ感じるようになっちゃって……んっ、んんーっ」 ダイチの抵抗むなしく、その言葉はヒビキの唇で塞がれてしまった。 それはいつもの光景だった。 ベッドの上で裸の二人。 ヒビキは手を伸ばし優しくダイチの頬に触れる。 「まだ、緊張しているのか? ダイチ」 「……少し……でも大丈夫です」 「そうか……じゃあ念入りにほぐしてやろう。さぁ、おいで……」 「はい」 ダイチは素直にヒビキの胸の中に入る。 すると、すぐにヒビキの口を使った愛撫が始まる。 唇、耳、首筋。 南下して、肩から脇を通り乳首へ。 ねっとりとしたキス。そして、ぴちゃ、ぴちゃとエッチな音を立てて舌が這っていく。 「あっ……ああん……ヒビキさん……俺、とろけそうです」 緊張していた体がほぐされ、さらにトロトロになるまで溶けていく。 全身が火照り、自然と男のモノを欲して体が開いていく。 ダイチは下腹部に溜まった性欲の塊を持て余し、足をモジモジさせた。 「ふふ、ダイチ、すごく感じているのが分かるよ……ここはもう限界かな?」 ヒビキは逆手でダイチのアナルに指を差し込んだ。 するとダイチは敏感に反応して歓喜の悲鳴をあげる。 「……あーっ! お、お尻の穴……そんな風に指でいじられたら俺……感じすぎておかしくなっちゃう……ううう……感じるっ……気持ちいいっ……気持ちいいよ……」 「そうか、可愛いよ、ダイチ」 「……ヒビキさん……俺、もう我慢出来ないっ……ヒビキさんのチンコ挿れて下さい。俺のケツマンコに……お願いします!」 「もうおねだりか? 男のモノをこんなにすぐに欲しがるとは……どうしようもなくエッチな男になったな、ダイチ」 「そ、そんな言い方って……だって、俺……」 「ん? 違うのか」 ヒビキは、意地悪そうな顔で指の出し入れを早くする。 「くううっ、やばいっ……ひ、ヒビキさん! 俺、ヒビキさんが言う通り、どうしようもなくエッチな男です……だから、早く、早く……」 ダイチは、M字開脚で腰を浮かし、ヒクヒクするアナルをヒビキに向けた。 「ふっ、しょうがない男だ。挿れてやるか……」 「……やった! ヒビキさんの勃起チンコきたっ……うっ……入ってくるっ……ケツマンコの奥までくるっ……うっ、かはっ……いいっ!……いいっ!」 ダイチは、ふと、姿見の鏡に、男に襲われてよがる男の姿が映った。 あんなに嫌だったのに……俺、こんなになっちゃった……。 確かに、初めてのセックストレーニングの時は違っていた。 ダイチは、開口一番ヒビキに言った。 「ヒビキさん、俺、あんたとしてもイク気ないんで」 当初ダイチはそんな風に突っぱねていた。 しかし、ヒビキの愛撫は多彩で甘美。 長く細い指が体中を触手のように這い回り、耳たぶは涎まみれで甘噛みされ、乳首はピンっと勃起するまで吸われ続けた。 今まで味わった事のないその快感は、ダイチの体をいやらしい体へと変貌させた。 自然と腰をくねらせ、喘ぎ声を上げ悦楽によがる。そして、男の肉棒を求めて下腹部を熱くする体。 「……俺は違う! 違うんだ!……どうして俺はこんな体になってしまったんだ」 混乱するダイチにヒビキは言った。 「ダイチ、お前はもともとそういう男だ」 「何を! 俺がビッチだとでも言うのかよ!」 「ふふ、勘違いするな。それは、スターになる為に必要な資質というものだ」 「スターだと!?」 ヒビキの説明は、性感帯を広く開発しその感度を高めていくことで、歌の表現力を豊かにし人を惹きつける歌声を作り出す、というものだった。 「……それがセックストレーニングってことなのか?」 ヒビキはうなづいた。 「だから、お前はどんどん感じる体になればいい。遠慮なく男を求め男で達しろ。それこそがお前の目指すところなのだから。数をこなせば自分でも成長を実感する事が出来るだろう」 「……成長?」 ダイチはふと気がついた事があった。 ヒビキにイカされる時に一瞬頭によぎるイメージ。 どこか大きい舞台。 そこで、誰かが、大観衆を前に気持ちよく曲を演奏している。 そんなイメージ。 それが何なのかよく分からないのだが、回数を重ねる度に鮮明になって行く。 それをヒビキに問いかけた。 「……やはりお前は、セックスシンフォニックの影響を受けやすいようだな……俺の目に狂いは無かった」 「セックスシンフォニック?」 「ふふふ、俺の音楽に対するイメージだ。気にするな」 それ以上、ヒビキは何も言わなかった。 ダイチの中で、セックストレーニングによって、本当に何か得ることができるのかもしれない、という腹に落ちるものがあった。 それからというもの、ダイチはヒビキの調教を素直に受け入れるようになったのだ。 「いいっ、いいっ……奥まで来てるっ……ヒビキさん、もっと、もっと!」 ヒビキの肉棒がアナルを出入りする度に、込み上げる快感。 力が抜け、顎が上がり、自然と漏れ出る喘ぎ声。 耳には、低い声で囁かれる甘くてゾクゾクする言葉。 頭の中が空っぽになり、ただペニスの事しか考えられない。 「俺、いっちゃう、いっちゃう……あーっ!!」 ダイチは、絶頂の断末魔と共に快楽の沼底へと沈んで行った。 **** ヒビキは、ジャケットの袖に腕を通した。 「じゃあ、俺は社に戻る。明日は朝からスタジオでレッスンだ。いいな……」 「……はい、ヒビキさん」 ダイチは、一人になるとやるせない気持ちになった。 男に犯される事にすっかり慣れた自分。 何の躊躇もなく、アナルを差し出す。 ちょっと前迄は、こんな事になろうとは少しも思わなかった。 ふとカイトに貰ったギターを見つめる。 じわっと溢れる涙が目を覆う。 「カイト、俺、このままだと、お前とのセックス忘れちゃうよ……」 ギターに縋り付く。 「でも、お前がいけない! お前が俺を捨てたから……だからいいんだ! これで! うっ、ううう」 ダイチは、カイトの事を想い、いつまでも啜り泣いた。

ともだちにシェアしよう!