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第15話

「……いってぇ……結局話って何……の…」 日比谷は岳端に引きずられてきしんでいた腕をぐるぐると回す。 「………単刀直入に言わせてもらう」 日比谷は岳端の真面目な様子に少し戸惑った。 「もう時間がない。」 日比谷は目を見開いた。 「…………………は?え、だってまだ時間は充分あるってお前が…」 岳端はその言葉を聴いて申し訳なさそうに顔を歪めた。 「…………恵くんには申し訳ないけど、あと一年もない。」 日比谷は、は?と声を震わせた。 「そ、んな…事俺が、俺ができるわけっ……なんて恵に言ったらいい!?あいつにとっては俺は只の赤の他人なんだぞ!!」 ガンっ!! とてつもない騒音と共に、ガタガタっと掃除道具入れのロッカーが倒れた。 岳端はギリギリと歯を噛み締める。 「………んなこと承知の上で言ってるんだよ?…俺だってどうしようか悩んだよ。降矢にだって言ってないんだからさ。」 「……………お前は手を出すな」 日比谷は絞り出すように声を出した。 「そうはいかない……時間がない。今のペースじゃ間に合わなくなる」 「いいからお前は手を出すんじゃねぇっ!!」 日比谷は大声で叫んだ。 「会話と子供遊び程度のキスしかできてないのによくそんなことが言えるね…!!しかも俺が来たとき、お前わざと寝たふりしてただろ?どういうつもりなんだ!」 「……あいつは積極的に話をするタイプじゃない。……一応あの事は意味までは伝えてないけど伝えてある。恵の為だと思ってやっていることなんだよ。何でお前に口出しされなきゃいけない」 岳端は舌打ちをした。 「……言っておくが俺は決してお前の為に歯車を直そうとしてる訳じゃない。だけど、それであの子に悲しまれるのは…とても辛い………」 日比谷は、黙り混んだ。 「龍、お前もその歯車を直したいのであれば自分のためだけに動くのはやめろ。あの子にとって何が最善なのかを決めるのはお前じゃない」 日比谷は岳端をキッと睨んだ。 「絶対あいつには手を出すな。手を出したらお前でも殺す」 岳端は至って冷静に口を開く。 「それは龍次第だけどね。もう一度言う。時間がないんだ。できないのであれば無理矢理にでも俺がやる。あの子が嫌がろうが泣き叫ぼうがお前に助けを求めようが、それは関係ない。これが最善の道なのだから」 そう言って岳端は静かに歩いていく。 薄暗い使われていない教室に取り残された日比谷は、くそっ!と机を蹴りとばした。 「どうして………どうしてあいつがこんな思いをしなきゃならない……?」 日比谷はそう言ってぐっと涙を凝らしめた。

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