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第14話

「で、結局のところ二人は面識があるんですか?」 恵は自分の席に座り、何故か一年生の教室に馴染んでいる生徒会長__岳端と、その横で威嚇するような目付きで岳端を睨んでいる降矢に質問をした。 「……まぁ、面識があるどころか子供の頃からのお付き合いってやつだけど」 降矢はそう言うと嫌そうな顔で背を向けた。 「降矢と蛍先ぱ……生徒会長は幼馴染みってことですか?」 すると今度は岳端がにこりと笑って答えた。 「そうなるね。本来なら立場上こんなとこで、とは思ったけど。嫌な予感は当たるもんだね。それと無理に生徒会長って呼ばなくていいから」 「めぐは俺の親友だから近付いたら次は口論どころじゃないよ、蛍先輩」 降矢はにこりと笑った。 「恵君に最初にあったのは俺なんだけど………?」 すると降矢は真顔で言う。 「出会った順序で友好関係を主張するなんて子供以下ですね」 恵はまた喧嘩が始まりそうだと思い、二人に割って入った。 「取り合えずやめましょうよ。何がそんなにお二人とも気に入らないんですか」 恵は先程から敬語で喋っているが、一応先輩であり生徒会長でもある岳端がいるので気を使っているだけだ。 ただ降矢は違った敬語で話す恵が見れてよかった、と内心能天気な事を考えていたりする。 すると次は恵に呆れたように、岳端がジト目をイメージしたかのような目で恵を見た。 「原因は全て恵君にあると思うけどね…そもそも何で降矢と同じクラスになってるの?……………ギリギリセーフで変更させたはずなのに」 最後の言葉が呟くようであまりよく聞こえなかったが、そんなこと俺に言われても困ると恵は思った。 (…一応降矢は人間の感情って言うものを色々と学ばせてくれるし、何より人当たりがいいし…。友達として一緒にいる分は最高の友達だと思うけど……) 恵は岳端が何がそんなに気に入らないのかと、二人の様子を見守った。 「……で、何で生徒会長である蛍が恵のクラスに?今、丁度生徒会で会議中だったはずじゃなかった?」 そうだったのか、と恵は岳端を見た。 「だって恵君が編入してからまだそんなに経ってないのに、何故か全く以て校内で会えないし、編入生だから何か困っとることもあると思ったからね」 そうして岳端は、あともうひとつ理由がある、と言って付け加えた。 「龍にも用事があったんだよね、個人的な件で」 そう言うと岳端はすくり、と椅子から立ち上がると恵の隣の席でずっと寝ていた日比谷を見下げた。 「起きてるのは分かってるんだから起きてね、龍。」 少しの間沈黙が漂ったあと、日比谷が諦めたようにはぁ、とため息をつき、顔をあげる。 「何の用だよ。蛍…」 恵はああ、そうかと頷いた。 (…降矢とも旧縁の仲って事は、その従兄弟でもある日比谷とも当然顔馴染みだよね) 恵がそんなことを考えていると丁度岳端が日比谷の腕を無理矢理掴んで、教室から引きずり出していくところだった。 「ちょっ!?…離せっ、蛍!」 「いいから、いいから。真面目な話があるんだよっ……じゃあちょっと龍借りてくね、恵くん。またあとでね~」 岳端はそう言うと龍を引きずりながらヒラヒラと手を振り、出ていってしまった。 そんな様子を呆然と見ていた恵はぼそりと呟く。 「……なんか台風みたいな人だった…」 すると降矢も同調するようにして、 「いや……あいつは嵐だ。めぐも近寄らない方がいい…」 そうお互いに言い合い、そして二人で同時にため息をついた。

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