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五時間目

何で、こんなに熱いんだろ。 それになんか菅谷くんが可愛い? 「えっと、」 「.....気持ち悪いだろ」 「へ?」 気持ちわるい?そんなこと思うわけない。 正直驚いたけど、なんで俺なんだろとは思うけど気持ち悪いなんて思わないよ 「なんで?驚いたけどそんなこと思わない」 「は?」 「ん?」 心底驚いた、と目を丸くする菅谷くん 青い瞳が綺麗でずっと見ていたくなる 「っ、あんま、こっち見んな」 少し落ち着いてきたと思っていた頬がまたぶわっと赤くなる その様子に、少しだけ、ほんの少しだけ意地悪したくなる 「えー、なんで?せっかく綺麗なんだし。ね、もう少し見して」 「!」 菅谷くんの頬に手を添えて瞳を覗く 鼻と鼻がくっつきそうなほど近づくと瞳は潤んで泳ぎ始める 「かわいい」 「は!?」 「菅谷くん可愛いね」 「っ〜〜!?」 あ、固まっちゃった。 菅谷くんの反応が面白くてついついからかってしまう。と、 「馬鹿にすんな」 キッと鋭い視線で睨まれる 馬鹿にはしてないけど、どうやらからかい過ぎたらしい 「ごめん、ちょっとからかい過ぎた。でも可愛いと思ったのはほんとだよ」 「普通、気持ち悪がるだろ.....」 「そうかな、でも俺は菅谷くんが俺の事好きって思ってくれてたら嬉しいよ」 「なん、」 言いかけた言葉を噤んで俯いてしまう。 ああ、聞きたいな。 もっと君の言葉を 文字じゃない、きみの気持ちが知りたくて仕方ない。 これが、好きってこと、なのかな。 「菅谷くん、名前は?」 「....」 「俺はね、日下。日下瑛司」 「えいし?」 パッと顔が上がり呼ばれた名前に胸の奥に熱がじんわりと広がる あったかくて心地のいい熱 もっと呼んで欲しくなる 「うん、菅谷くんは?」 「.....で」 「ん?」 「楓、菅谷楓」 「かえで?......うん、綺麗だ」 かえで、と何度か心の中で復唱する 昔から知ってるみたいにすんなりと俺の中で溶けていく 「女っぽいだろ」 「そ?俺は好きだよ」 「っ、そういうの、軽々しく言うな」 軽々しく言ってるつもりは無い。 だって気づいちゃった。 あの机上のやり取りだけじゃなくて、こうしてちゃんと顔も声も名前も知れた今気づけた。 「好きだよ」 「...っだから!」 「うん、好き」 「はっ?」 「ごめん、俺楓のこと好きだ」 「っ!?」 驚いた顔はやっぱりとても可愛い イケメンってやつはホントにずるいな!! 「あははー、やっと気づけた!ずっと気になってたんだよね、なんでこんなに楓のこと知りたいのか」 「!?」 「これってきっと恋でしょ?」 「俺にき、くな...」 楓の顔は真っ赤 まるで色づいた秋の楓みたいに 「頭、追いつかねえ」 「えー?単純でしょ」 「..」 「俺が楓を好きってこと」 「なんで...」 疑い深い、というか本当に信じられないって感じだ まあ俺も自分自身驚いてるから仕方ないか。 「素っ気ない態度で、でも律儀で真面目なとこも、その明るい髪も綺麗な顔も低過ぎない声も、ちゃんと触れて見たら好きだなって思った。出会ったのはあの机の上でも恋をしたのはきっとこうやって会えたからだよ」 「...。」 まだ信じれてないのか口をパクパクしてる ンー、どーしたら信じてくれるかな と、その時楓の艶やかな唇に目が止まった。 「楓」 「あ?、んっ」 不意打ちで名前を呼べば素直にこちらを向いた楓 そして、触れるだけのキスをひとつ この柔らかさを一度知ってしまえばもう戻ることは出来ないな、と冷静に頭の片隅で思った ッ、と聞こえないほどの音を鳴らして離れた唇 「な、な、な、」 みるみるうちに先程とは比べ物にならないくらい赤くなって 湯気が出るんじゃないかってほど熱い楓の頬を撫でる 「好きだよ、楓。俺と付き合お?」 「おまっ、は、なに、え、」 カッコつけてみたけど結構俺も恥ずかしいんだけどな〜 何度も開閉してるキスした唇を確かめるみたいに指でなぞる まだ状況を理解しきれてないみたい。 でも俺は知ってるんだぞ 君が、俺の事好きなことを 「俺は言ったのに楓は言ってくれないの?」 上目遣いなんてしたことないけど多分これでいいだろ! 俺の目を見た楓は何かに耐えるみたいなグッと唇を噛み締めたあと 「....好き......かもしれない」 ぽつりと呟いた 「かもなの?」 「お、まえ……性格悪い」 「えー?でも、嫌いにならないでしょ」 「っ!性格悪すぎだ」 遠回りをしてしまったけれど きっとあの机上に綴った文字は俺たちが出会うために書かれた君から俺への手紙だ。 そして、 俺から君へのラブレターだったんだ。

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