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2.推しはやっぱりいつまでも尊い

 さて、男子高校生といえば思いつく限りのことを皆さんで考えてみようか。  DK。ドンキーコングじゃないよ。体力、ブリーチをセルフで、見えパン。全部そうだけど全部違う。なんでこんな非王道的なものばかりあげるんだ。おかしいだろう。もっとあるじゃん。ほら、例えばそう!成長期とか!成長痛とかさ。他にもほら、もっと王道的かつこれぞまさにっていうやつが。  男子高校生といえばそう!食、食事だ!  この頃になれば腹が減って仕方のない男子高校生。例外はもちろん存在するが、それ以上に常に腹をすかせている男子高校生はこの学園でも沢山いる。  食堂はね、そんな男子高校生の腹を満たすためのいわばオアシスみたいなものなの。昼時になれば購買部と食堂は戦地に変わる。  だから俺みたいな食事に対して興味のかけらもない、例外の方に当てはまる稀有な男子高校生にとっては正直、いやかなり関わりたくない場所になっているのは言うまでもないだろう。俺は毎朝千切って作ってるサラダとチキンで十分。タッパーに詰めてドレッシングとスプーンさえ持ってくれば十分な食事と言えるだろう。これさえあれば教室でも生徒会室でもどこででも食べられる。うんうん、お弁当って実は勝手がいいものだよねぇ。  そんなタッパーサラダ勢の俺にとっては食堂なんて滅多に利用できるところじゃない。むしろあんな紛争地帯、お近づきになりたくない。そう思っていたんだ。 「なんで俺ってば食堂にいんのかなぁ?」 「それは俺が食事に誘ったからだな。」 「なんで俺ってば委員長の目の前に座ってるのかなぁ?」
「それは逃げようとしたお前の首根っこ掴んで俺が無理矢理着席させたからだな。」 「なんで俺ってば二階席にいるのかなぁ?」 「それは正当な権利だろ。なんてったってお前はこの学園の生徒会会計なんだから。」 「ごめん、この際金銭のことははっきりしておきたいから先に言っとくね。……委員長の口座に200万スパチャします。」 「俺は配信者じゃねぇからそう言った機構はねぇなぁ。」  そう言ってケラケラ笑う委員長の目の前には、ステーキとそれから米、サラダとsムージードリンクが置いてあった。いや、スムージードリンクは飲み物じゃないだろ、食べ物だろ。なんで飲み物枠で置いてあるんだよ。  けどまぁ、スムージードリンクを飲む委員長ってめちゃくちゃ解釈一致。炭水化物でガッツリ太る物を摂取しているとはいえ、全てこのドリンクのおかげで解決してるね。  俺が委員長とスムージーの可能性に思考に耽っていると、目の前の委員長は俺の取り出したタッパーを見て眉間に皺を寄せた。  あぁ、渋い顔の委員長だ!これが写真オッケーの現場だったら迷わずスマホ構えてたね。けど俺は害悪なファンじゃないから、携帯は持つだけで我慢するもんね! 「ったく、お前っていっつもそんなモン食ってんのか?だからひょろひょろなんだよもっと肉を食え。」 「ダメダメ!脂身がほぼないチキンならともかく、委員長が食べてるようなやつ食べると胃もたれしちゃうもん。それにこのチキンだってタンパク質のために仕方なく摂取してるんだよ?」  首を傾げながらも俺だって渋い顔をして見せる。なんてったって脂っこいお肉を食べたのは実に数年以上も前の話で、今やお魚の脂っこい物ですらも受け付けられない超絶ベジタリアンな体になっているのだ。ここで肉なんか食べてみろ、胃もたれで一日以上は食べ物を受け付けられなくなってしまう。  けど委員長は俺の渋い顔すらもさらに渋い顔をして返してしまう。 「胃が弱ってんだよ。本当にお前は男子高校生か?抱き心地が悪くなる、もう少し肉付けろよ。」 「身体目当ての委員長って、それはそれで下衆な感じがギャップでカッコイイなって思うけど残念ながら俺って推しと肉体関係を持ちたいと思ってるファンじゃないんだよねぇ。むしろ処女性すら求めてるまであるから、そういうのは解釈違いです。」 「別に体目当てってわけじゃねぇよ。ずっと言ってんじゃん。俺はお前のことが好きだって。」 「だぁからぁ、推しに告白されるのは解釈違いですってぇ。」  委員長から告白をされるたびに俺の目は死んだ魚のようになっていく。公式が正解だからこそ、公式からの供給は受け入れて自分の解釈にしていくことこそがファンでありオタクの在り方だと思うんだけどねぇ。(諸説ありだよぉ。)だけど委員長から告白をされればされるだけ、俺の中の委員長像というのがどんどんと崩れていく。けど俺はそれでもいいと思っている。解釈は常にアップデートって言うしねぇ。  だけど、恋愛がらみでしかも俺にそう言った目が向けられている、ということ自体は正直言って受け入れ難い事実である。それが何よりも苦しい。  委員長のことはかなり好きだ。むしろ崇拝していると言ってもいい。だけど恋愛感情があるのかどうかって言われれば何度も言うようであるが皆無である。推しと恋愛をしたいわけじゃない、支えたいのだ。崇拝したいのだ。  死んだ魚の目のまま、そっぽを向けば一階席の様子がよく見れた。  この学園の食堂はねぇ、一階席と二階席に分かれていて、一階席は一般生徒の食事スペース。二階席は役職持ちの特別席になってるんだよねぇ。役職持ちなんて正直言ってあんまりいないわけだから、二階席は広々と使えてとてもいい。しかし、下を見渡せば戦場になっているのだからあまりいい物でもないだろう。  ほら、可愛いって評判の小柄な親衛隊隊長が大盛りのカツ丼食べてる。その横にはポテトフライまである。頭おかしいって、どこにあんな量の食べ物が入るところがあるんだ。  俺が下の席を見て戦々恐々としている最中であった。委員長は注文パネルをぽちぽちと押し始めてるじゃないか。 「ちょっと、まだ食べるの?すごいねぇ〜推しの胃袋が世界一強いねぇ〜。」 「で?お前はどれを食べるんだ?」 「すっごい話をぶった斬ってくるじゃん。流石は委員長、そこに痺れる憧れる〜。」 「で?お前はどれを食べるんだ?」 「食べないよぉ、サラダで十分。」 「これ以外にもせめて何か食べろ。真面目な話、お前の栄養不足を心配してんだよ。」  あぁ、委員長ってば優しいねぇ。一ファンの俺にすらもこんなに優しく気にかけてくれるなんて。ちょっとした感動を覚えると同時に、仕方がないと委員長から俺はパネルを受け取った。  メニューにはファミレスで見るものばかり。オムライスにスパゲッティ、それから和食御膳にあとはサイドメニューとか。 「……あ、」  すいすいと画像を飛ばす俺の指がぴたりと止まる。そこに書いてあったのは、デザートのサンデー。  チョコレートのサンデー。アイスにチョコに、それからフレークにってふんだんにあしらわれたそれは、どう考えても美味しそうで。  ほら、甘いものは別腹って言うし?デザートなら正直いくらでも食べたい。嘘、小さいのを食べたい。 「…………いいんちょお〜……」  肉を食えって言われた直後にデザートというのは我ながら女々しいとすら思う。むしろ、肉とは正反対の食べ物だ。共通点はカロリーくらいだろうか。  しかしながら、この中で頼めと言われればそれしか選択肢はない。むしろそれ以外の選択肢はない。  委員長に申し訳ない気持ちと、それからこれなら食べれるって意味をこめてそっとパネルを差し出した。  すると意外なことに、委員長の眉間から皺がパッと取れたではないか。 「デザートな。このチョコレートのやつか?」 「うん……」 「ならそれ頼むぞ。」  ぽちぽち、とツータップで注文をしてしまった委員長はあっさりとパネルを元の場所に戻してしまった。  ……あれ、意外だ。お叱りが飛んでこない。あっさりと注文し終えた委員長は、そのまま食べかけのステーキ肉をナイフで切る作業へと入ってしまう。 「……ねぇ、お肉頼まなかったけどいいのぉ?それに栄養とかデザートでなんか取れないし……」 「お前が食べたいんならそれが一番だろ。確かに栄養はもっととって肉ももっと食って欲しいとは思うけどさ。けど、今無理して食べる時じゃねぇだろ。」  食事は楽しく、な。なんて言った委員長はそのままフォークに突き刺さっている切ったお肉を口の中に放り込んだ。    ……あぁ、やっぱり推ししか勝たん。この優しさこそ、隼総巽が委員長である言えんだろう。  好き、大好き。一生推す。例え俺に告白をしてきているという事実があったところでそんなの知らん。俺は一生涯、この人に尽くすのだ。  ファンとしての俺は、その時新たに誓いを立てた。隼総巽を一生推すって。それと同時に恋愛面で揺らいでる俺なんてどっかに行ったどころか痕跡すら跡形もなくって。  あぁ、俺は一生委員長の思いに応えられる日が来ないんだろうなぁ、なんて。

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